botが人よりも適切な物件を提案
「AI」(人工知能)が不動産担当者の職を奪う?
不動産業務にAI技術を取り入れる動きが広がりつつある。反復作業によるミスを減らすといった日常業務の効率化だけではなく、顧客が好む物件を提案するなど、人の判断を代替する用途も現実的になってきた。
不動産業界では機械学習をはじめとする人工知能(AI)技術を利用して、現実の物件と仮想世界を結び付け、取引の強化を図る動きがある。人々が暮らし、働き、食事をし、遊ぶ建物や物件は、言うまでもなく有形資産だ。対して不動産業界のAI技術は、人々が物件を体験し、交流し、売買する方法から、さらに価値を引き出すために利用される。
不動産業務と書類仕事の支援
現在のデジタル時代でさえ、不動産業務の大半は依然として書類中心だ。融資や借り入れの申請、間取の計画や調査、テナントの申し込み、保険証書など、不動産業務では書類仕事が多く、数多くの書類が飛び交っている。裏を返せば、不動産業界にはAI技術が入り込む大きなチャンスがある、ということだ。
これら全ての書類を管理し、全てを最新状態にして、情報を失わないようにするのは、複数の物件を所有/管理する側には大きな負担になる。自然言語処理(NLP)ツールを応用すれば、全ての書類や文書を処理し、見つけにくい情報の場所を素早く特定するのに役立つ。
Zillowなどの不動産サイト運営企業も、AI技術を実装したインテリジェントな業務自動化ツールを利用している。こうしたツールはbotを使って、さまざまなシステムにデータを入力する。botは繰り返しデータを入力するといった退屈な業務を代行し、ミスを減らし、多くの工数を削減する。
不動産業務のAI技術は、複数のシステムにまたがって情報の明確さを保ち、最新状態を維持し、情報をタイムリーに提供する。業務効率を上げ、数日、数週間、場合によっては数カ月もかかる作業をスピードアップすることもできる。
AIシステムを利用して、不動産業者(販売業者)や不動産管理業者を見つけ、連絡を取っている不動産物件の所有者もいる。こうしたAIシステムは、不動産物件のデータを追跡し、特定したパターンに基づいてメンテナンスや管理の仕事を推奨する。価格が大きく違うサプライ用品を調達する最適な時期も知らせてくれる。
併せて読みたいお薦め記事
「AI」についてもっと詳しく
主要なAI製品を比較
不動産の売買方法とマーケティング手法が変わる
主にAIシステムは、事業用不動産のマーケティングや、営業担当者による物件販売/販促方法の改善に利用されている。機械学習は、家主に最大の利益をもたらすテナントや、そのテナントの様式に一致する見込み客を見極めることができる。AIシステムは、見込み客を見つけ出し、検証し、豊富に蓄えていく。見込み客の行動や好みに関する洞察も提供する。不動産業者はこうした情報を利用して、テナントがもっと広いスペースを必要としていることが分かったら、戦略を立てて、そのテナントに接触できる。
マーケティングの成果に関するデータを基に、AIシステムは機械学習を利用して特定のマーケティングメッセージに反応する可能性が高い見込み客を見極める。加えて、そうした見込み客の好みに合わせて不動産広告をカスタマイズする。
事業用不動産の場合、物件所有者が「急成長中のIT企業をテナントにしたい」と考えていれば、ミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭に生まれた世代)を中心とした労働者のニーズを満たすように、物件の条件を調整できる。物件所有者が法律事務所や会計事務所をテナントにしたいのであれば、そうした専門家のニーズを満たすよう力を注ぐ。
不動産担当者は、既存のテナントや見込みテナントとのやりとりに、チャットbotや音声アシスタントといったAIシステムを利用し始めている。こうしたAIシステムは24時間常時利用可能で、さまざまな仕事を支援する。物件を管理するオフィスに電話をかけたり、営業時間まで待って連絡したりする必要はない。
チャットbotは、施設の備品や物件の面積などに関する一般的な質問に答え、メンテナンス要請の状況に関する問い合わせに対処する。こうしたチャットbotは、顧客サービスのコストを削減し、24時間体制のサポートを提供することで不動産企業を支援する。
AIによって強化される物件の検索と分析
不動産業務のAI技術は、企業による不動産物件の購入/分析を支援する。機械学習を利用して、物件の特徴と前年の住宅販売に基づき、その物件の市場価値を見積もっている著名な物件所有企業もある。同社は、将来の価値の予測に使用できる価格設定パターンの特定にも機械学習を利用している。
Zillowは、正確かつタイムリーに情報を提供するAI技術ベースの仕組みを開発し、機械学習の利用と幅広いデータソースの探索によって不動産価格を見積もっている。
機械学習を利用したAIシステムは、ソーシャルメディアを検索して、地域内の物件に関する住民の感情や生活の質、犯罪などの懸念事項を明らかにすることもできる。こうした情報は、不動産企業が賃貸価格を決めたり、特定の物件に投資するかどうかを判断したりするのに役立つ。
不動産投資家がパラメーターに基づいてリスクを評価し、条件が基準と一致した場合に投資家に知らせる、高度なAIシステムもある。こうしたAIシステムは、不動産一覧と入居可能な賃貸物件を宣伝するWebサイトを監視して、価格設定と入居可能性の傾向を把握する。NLPを使用して大量のWebサイトとデータベースの情報を毎日処理し、注目に値する不動産のトレンドをプラス/マイナスの両面で素早く把握できるようにする。
多くの物件所有者にとっては、テナント賃貸料の未納や債務不履行は重大なリスクになる。多くの賃借テナントを抱える企業の中には、AIシステムを利用してテナントの状況を監視している企業もある。こうしたAIシステムは、財務上未解決の問題の兆候を見つけたり、履歴データを調べて債務不履行を予測したりすることで、リスク評価プロセスの効果を高める。
不動産企業はAI技術の力を生かして市場を正確に把握し、さまざまなメリットをもたらすだろう。それは単に人々に住む場所を提供したり、企業に仕事の場を提供したりするだけにとどまらない。
不動産情報サイトを運営するInman Groupは、2016年に実在の人物に住宅を薦める業務に関して、botと3人の不動産担当者を競わせた。その結果、その人物は3人の担当者ではなく、botが提供した物件を選んだ。これが、これから起こることの兆候となる可能性がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
2
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
3
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
4
「テザリング依存」に潜む落とし穴 “遅いVPN”を解消するネット構築術
-
5
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
6
Claude利用8割のGMO、AI人材の評価軸が「トークン管理」に変わった
-
7
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
8
被害額は過去最高額 それでも「サイバー犯罪者が捕まらない」3つの理由
-
9
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
10
「IT運用・情報システム業務」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
3
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
4
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
5
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
6
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
7
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
-
10
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー