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分散クラウドストレージサービス「Storj」がAmazon S3互換サービスを開始Storjがオブジェクトストレージ化

ユーザーのストレージを利用して利用料を還元するクラウドサービスのStorjが、Amazon S3互換オブジェクトストレージサービスTardigradeを開始。QNAP製品をTardigrade化するアプリもリリースした。

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 分散型クラウドストレージプロバイダーのStorj Labsが、ユーザーのローカルNASを同社のクラウドサービス「Tardigrade」の一部に簡単かつ短時間で変換して暗号通貨を受け取れるアプリケーションをQNAP Systems製品ユーザー向けにリリースした。

 2020年3月に発表されたTardigradeは、分散型クラウドストレージのStorjネットワークをAmazon Web Services(AWS)の「Amazon Simple Storage Service」(S3)と互換性のあるオブジェクトストレージとして利用できるサービスで、Storjネットワークに登録しているユーザーのドライブの余剰領域で構成される。

 Storjネットワークにより、ユーザーは自分のローカルストレージの未使用領域を収益につなげることが可能になる。ローカルストレージは何でも構わない。だが、QNAP製品ユーザーならばTardigradeアプリケーションを利用して簡単にTardigradeの一部にできる。

 Storjネットワークに登録したユーザーは、ストレージノードオペレーターになる。ストレージノードオペレーターは自身のストレージを他ユーザーが利用できるようにして、同社の「ERC-20」(訳注:仮想通貨のトークンの統一規格)トークンで定期的に支払いを受けることができる。

 Storjネットワークにノードを接続すると、そのノードに暗号化したデータが送信される。Storjネットワークにアップロードされる全データは80個のシャードに分散される。ファイルの再構築に必要なのはそのうち30個のシャードだけだ。シャードはネットワークのさまざまなストレージノードに分散される。分散先のストレージノードは固有の電源装置を持ち、地理的に異なる場所にあることが保証される。

 ストレージノードオペレーターには、Storjネットワークに提供する静的容量とデータ所有者がノードからファイルをダウンロードするときに使う帯域幅に応じた報酬が支払われる。

 Storjネットワークのストレージノードオペレーターになるには、ストレージ空き容量500GB以上、1カ月当たりの帯域幅2TB(かつ1カ月当たり上り5Mbpsおよび下り25Mbps)、1カ月当たりの最大ダウンタイムが5時間以下という要件がある。

 Storjネットワークが適しているとされるユースケースはセカンダリーワークロードや非構造化ワークロードだ。メディアファイル、大容量ファイル、モノのインターネット(IoT)などのエッジデータ、機械学習のデータセット、アーカイブデータなどがこれに該当する。現時点の分散クラウドストレージは、遅延の影響を受けやすいアプリケーションには明らかに向いていない。

 Tardigradeへのアクセス承認の仕組みをアプリケーションに組み込むこともできる。それにはGoogleの「Macaroon」(Cookieに似た技術で、分散環境での承認に使われる)に基づくAPIキーを介する必要がある。

 Storjネットワークの利用料金は1TB当たり月額10ドル(約1080円)だ。ダウンロードは1TB当たり45ドル(約4880円)かかる。Storjの狙いは、大手クラウドプロバイダーの半分のコストで容量を提供することにある。

 Tardigradeは2019年4月のαリリース以降、ネットワークに保存された200万のファイルを失ったことがないという。99.9999%の可用性を誇り、実稼働リリースでは99.9999999%を目標としている。ダウンロード速度は、分散型という特性により大手クラウドプロバイダーよりも安定しているという。

 Storj Labsは、QNAP製品向けの「Tardigrade S3 Gateway」の早期アクセスも発表している。これにより、QNAPの管理ツール「Hybrid Backup Sync 3」でデータをTardigradeにバックアップできるようになる。

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