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「映画はもうからない」の常識をアナリティクスが変えるデータが支える映画製作の意思決定【前編】

脚本が出来上がってから作品が公開されるまで、映画製作のありとあらゆる意思決定にアナリティクスが役立つ。制作会社はアナリティクスをどう活用し、どのような効果を得ているのか。

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データ分析 | 機械学習


 映画はデータなしでは完成しない。しかも大量のデータを必要とする。ハリウッドの魅力を思い描くとき、真っ先にアナリティクスが頭に浮かぶことはないとしても、映画製作のあらゆる工程の意思決定はデータに基づいている。

 アナリティクスは映画製作のさまざまな決定に役立っている。脚本の承認、監督選び、配役、撮影場所、撮影順序、対象(米国、欧州、アジア、機内、ディレクターズカットなど)別のカット編集、DVDフォーマットの決定……などだ。作品のマーケティングや上映する都市・劇場の選定、その他のプロモーション戦略にもアナリティクスは役立つ。

 データを活用するために加工したり、組み合わせたりする「データキュレーション」ベンダーのTamrは、2020年6月11日にWebセミナー「Connecting Data: A True Hollywood Love Story」を開催。コンサルティング会社Iverson Consultingのプレジデント兼CIO(最高情報責任者)兼CTO(最高技術責任者)、エリック・アイバーソン氏を講師に招いた。アイバーソン氏は、大手タレントエージェンシーCreative Artists Agency(CAA)のCIO兼CTOやテレビ番組制作会社Sony Pictures TelevisionのCIOを務めた経歴を持つ。

 「ハリウッドの現場は浮ついていると、多くの人が思っている。クリエイティブなことばかりであり、行き当たりばったりに物事が進み、科学の入り込む場所などないと」。アイバーソン氏はこう語り、次のように続ける。「医療や科学の分野で働く友人たちは、ハリウッドの舞台裏に科学があるとは思いも寄らないようだ。実際のメディアエンターテインメントは非常に複雑なビジネスであり、困難に満ちている」

“もうからない映画制作”を「アナリティクス」が変える

 映画やテレビシリーズは大金を稼ぎ出すものの、製作コストを差し引いた利益はあまり多くない。もちろん作品によっては多額の利益を生むものもあるが、製作にかかった費用を回収できない作品の方が多い。だからこそ、可能な限りの予測を導くアナリティクスが重要な役割を果たす。「どんな作品を作るのか、時間をかけて十分に検討する必要がある。観客層を想定し、適切な材料を集め、効果的なストーリーを構成しなければならない」とアイバーソン氏は説明する。

 アイバーソン氏によると、ハリウッドも他の業界とあまり違わないという。出来上がった製品を販売する他の業界と同様に、ハリウッドにもサプライチェーンがあり、そのサプライチェーンに沿って、最適な最終成果物を作るための意思決定にデータを役立てている。

 映画製作におけるサプライチェーンの最初の工程はプリプロダクション(撮影前作業)だ。必要な資金調達や契約などの複雑なプロセスであり、関係者総勢で取り組むことになる。次が映画製作そのものだ。製作会社が脚本の仕上げからキャスティング、撮影、編集まで担う。

 製作工程の終盤では、予告編の公開が重要なデータ収集ポイントになる。予告編を動画共有サービス「YouTube」で公開すると、再生回数や高評価数、コメントの内容、視聴者維持率(動画を最後まで視聴した視聴者の割合)、クリックした人の人口統計を追跡できる。そうした情報を材料として、最終的に公開する本編に変更を加えるかどうかを決定する。

 映画の完成が近くなると、その段階から配給会社がサプライチェーンに入ってくる。サプライチェーンの最終段階には、上映する劇場や配信するストリーミングサービスなどが加わる。「そこには膨大な量のデータが発生する」とアイバーソン氏は語る。「各工程で意思決定を必要とし、ワークフローを進めていくには、膨大な量のデータが必要になる」(同氏)

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