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イレージャーコーディングの限界イレージャーコーディングの正しい使い方【後編】

多くのメリットがあるイレージャーコーディングだが、あらゆる課題を解決できるわけではない。イレージャーコーディングの適用が不適切なケースを紹介する。

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 前編(Computer Weekly日本語版 11月18日号掲載)では、RAIDで見えてきた課題と、RAIDに代わる手段として期待されるイレージャーコーディングの概要を紹介した。

 後編では、イレージャーコーディングでは対処不可能なケースと効果的な用途を解説する。

クラウドだけのものか

 これまで、イレージャーコーディングは主にオブジェクトストレージに関連付けられてきた。つまりクラウドに関連付けられてきた。ブロックストレージやファイルストレージにはあまり適していないと見なされている。だがNASサプライヤーがイレージャーコーディングを使うようになっている。NetAppは「StorageGRID」にイレージャーコーディングを採用している。それだけではない。「Apache Hadoop」「VMware vSAN」「Nutanix AOS」にもイレージャーコーディングが用いられている。

 一般に、イレージャーコーディングは一定レベルの遅延を許容するよう設計された分散システムや、エンドユーザーによって遅延が重要ではない場合に機能する。Nutanixはバックアップ、アーカイブ、WORMワークロード、メールにはイレージャーコーディングを利用しても、書き込みが集中するアプリケーションには使わないことを推奨している。

 だが、巨大なデータセットの保護は、イレージャーコーディングが唯一の実用的な選択肢になる可能性がある。

 ESGでアナリストを務めるスコット・シンクレア氏は次のように話す。「オブジェクトストレージは一般に大き過ぎて定期的に完全バックアップするのは不可能だ。一次コピーにより高いレベルの可用性を確保する保護技術が必要だ」

 「大容量ドライブを大規模に利用する場合、RAIDでは再構築に時間がかかり過ぎる。再構築中に別の障害が発生するとデータにリスクが及ぶ恐れがある」

バックアップにはならないイレージャーコーディング

 イレージャーコーディングにも欠点はある。

 最も大きな問題が処理のオーバーヘッドだ。イレージャーコーディングはCPU処理が必要になる。RAIDはデータのコピーを別のドライブまたはRAIDストライプに格納するだけだ。CPU負荷は遅延を生み出す可能性がある。だが、欠点はそれだけではない。

 シンクレア氏は次のように話す。「イレージャーコーディングはパリティーを計算するために、システムへの要求がより厳しくなる可能性がある」

 「イレージャーコーディングは保護の1レベルにすぎず、バックアップの代わりにはならないことを理解することも重要だ。HDDやSSDの障害に対する効率的な保護方法にすぎない」

 イレージャーコーディングは、特にオンプレミスシステムでは従来のバックアップに代わるものではない。ベッツ氏は次のように語る。「イレージャーコーディングとバックアップは全く別物だ。バックアップは、独立した二次コピーを作成することを意味する。できれば『エアギャップ』を設けて格納するのが望ましい。プライマリーデータがイレージャーコーディングによって保護されているからといって、不注意であっても悪意を持ってでも、破損や削除を防ぐことはできない」

 ランサムウェアなどの脅威に対する保護としてバックアップが必要であることは変わらない。

 イレージャーコーディングは、データレプリケーションに完全に取って代わるものでもない。クラウドサービスではなくオンプレミスのデータを保護するためにイレージャーコーディングを使っている企業は、サイトの障害から回復する方法を検討することが不可欠だ。

 完全なオフサイトレプリケーションを行っておけば、フェイルオーバーサイトから運用を再開できる。だが、イレージャーコーディングではデータの完全なコピーは提供されない。シンクレア氏は、イレージャーコーディングを使っている場合でも、運用データ全ての二次コピーを用意しておくことを推奨する。

 オフサイトレプリケーションの代わりとしてイレージャーコーディングをセットアップすることは可能だ。だが、それには慎重な計画が必要だ。

 IT部門の管理者は、データが格納されている場所を把握し、1カ所が完全に機能しなくなる障害が起きてもそれを補えるだけの保管場所を確保する必要がある。

 デコーディング処理にはオーバーヘッドがあるため、こうした分散環境ではパフォーマンスに影響する可能性がある。

 結果として、イレージャーコーディングがますます重要な役割を果たすように見える。だが、イレージャーコーディングはツールの一つにすぎない。

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