低価格・大容量のQLCフラッシュに最適のユースケースとは?:欠点も考慮すべし
フラッシュストレージの容量当たりの価格は下落し続けている。これを加速させている要因の一つがQLCの普及だ。低価格・大容量だが欠点もあるQLCの使いどころとは何か。
フラッシュ技術はSLC(シングルレベルセル)、MLC(マルチレベルセル)からTCL(トリプルレベルセル)に進化してきた。現在は、1セル当たり4bitを格納できるQLC(クアッドレベルセル)ストレージも登場している。QLCとはどのようなもので、どの程度のコストで、どのようなユースケースに適しているのか。
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QLCが普及し、広く受け入れられ始めたのはここ1年ほどのことだ。その理由の一つは、価格が着実に下がっていることにある。調査会社のWikibonはQLCとHDDの価格比較を続けており、両者の価格差が大幅に狭まっていることを明らかにしている。
HDDサプライヤーは恐らくHDD技術が頭打ちになっていることには同意しないだろうが、容量ベースではフラッシュがHDDの売り上げを既に上回っている。その多くはQLCの普及によるところが大きいとWikibonは考えている。
Wikibonによると2015年はHDDの平均価格が1TB当たり45ドル(約4800円)だったのに対し、フラッシュは840ドル(約9万円)もした。今ではそれが21ドル(約2200円)と86ドル(約9300円)になった。2026年には両者の価格は同じく1TB当たり15ドル(約1600円)になると同社は予想している。だが、これらの数値の背景を幾つか考える必要がある。
特にQLCの場合、価格の判断が難しい。サプライヤーが示しているのは定価にすぎず、実情があまり反映されていない。サプライヤー、デプロイ方法、製品の品質によって価格は大きく異なる。
2020年、Nimbusは8000ポンド(約120万円)の64TB QLCドライブを発表した。これは1TB当たり約125ポンド(約1万9000円)に相当する。だが、パフォーマンスによっては価格が大幅に高くなる可能性がある。Pure StorageはQLCのオールフラッシュアレイを発表してこの戦いに参入した。その価格は1TB当たり約500ドル(約5万4000円)だ。
QLCのユースケース
QLCの導入が大きく広がった原因は価格の下落だけではない。多くの要因があるが、その全てには相応の根拠がある。例えば、より高速にデータを分析・管理するというニーズがある。IoT機器や自動運転車のような先進技術の利用が増加していることもある。どちらも、QLCによる読み取り時間短縮の恩恵を受けられる。
QLCが影響を及ぼしている新たな分野も幾つかある。その一つが仮想化環境だ。ポリシーベースのプロビジョニングを可能にするこうした技術は、QLCの強みを生かせる要素の一つだ。QLCの速さを生かしてデータ保護の方法を改善できる分野もある。スナップショットの復元などがその例だ。
ランサムウェアなどの攻撃を受けた後の大規模な復元の速度を向上させるため、より多くのQLCが使われるようになることも考えられる。
オンサイトとオフサイトの比較
クラウド化の傾向は明らかに高まっていて、それがQLCの利用に反映される。その側面の一つは、企業がストレージを利用する方法を従量制課金モデルに切り替えていることだ。Gartnerの調査がこれを裏付けている。2025年までには少なくとも50%の企業がOPEX(運用コスト)ベースのストレージ利用モデルに切り替えると同社は予測する。ちなみに現在は10%未満だ。
2023年にはちょうど5分の1の企業が、管理ツールを使ってストレージをパブリッククラウドに直接統合すると同社はみている。そこで主要な役割を果たすのは、バックアップとリストアにおけるQLCになるだろう。
クラウドの背後で何を利用しているのかユーザーには分からないという非常に現実的な要因もある。ユーザーは技術ではなくサービスを利用する。クラウドプロバイダーはパフォーマンスを維持したままスペースも確保する必要がある。それがクラウドプロバイダーのQLC利用を促す要因になる。この点でQLCが将来果たす役割は大きい。
制限はあっても影響は薄れないQLC
今後数年で、開発パイプラインにはPLC(ペンタレベルセル)も加わるが、その道のりはまだまだ遠い。
QLCが今後に大きな影響を与えるのは間違いない。企業にはQLCの利用が広がる余地がある。だが、QLCが全てに適しているわけではない。QLCが優れているのは読み取り専用のアプリケーションだ。
フラッシュストレージには全て、書き込み可能な回数に制限がある。特にQLCは摩耗の影響が大きいため、ライフサイクルは短い。長期利用を前提とする用途は避ける必要がある。管理者はQLCの問題点を認識しておく必要がある。
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