クラウドプロバイダーのOSS利用をユーザーはどう見ているのか:オープンソースには悪影響
パブリッククラウドによるOSSのサービス提供は、OSS企業独自の制限ライセンスの適用を招いた。この現状はさまざまな弊害を生んでいるが、ユーザーはこれをどう見ているのだろうか。
Vanson BourneがPerconaに委託されて行った調査によると、サーバサイドに適用されるライセンスがパブリッククラウドの一部の顧客に悪影響を及ぼし始めているという。調査に参加したITプロフェッショナルの半数以上は、パブリッククラウドプロバイダーはオープンソースソフトウェア(OSS)企業をよりサポートする必要があると考えていることも分かった。
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パブリッククラウドはOSSに大きく依存している。オープンソースコミュニティーに貢献しているパブリッククラウドプロバイダーもある。だが、人気があるOSSを基にマネージドサービスを開発する傾向が高まっている。
こうしたサービスは、OSS企業が提供するマネージドサービスと競合する。パブリッククラウドプロバイダーが競合するマネージドサービスを提供することで、OSS企業の収益源を奪っていると指摘する業界評論家もいる。
前述の調査によると、ITプロフェッショナルの58%はOSS企業が現在直面している課題トップ3の一つに「OSSを使用していながら、そこに貢献していないパブリッククラウドプロバイダーとの競争」を挙げているという。
OSS企業の多くがパブリッククラウドプロバイダーの脅威との対峙(たいじ)を目的として、新たなライセンスを導入している。MongoDBはSSPL(Server Side Public License)を用意し、SaaSを提供するクラウドプロバイダーに料金を請求している。
Grafana Labsは最近、オープンソースプロジェクトのライセンスをApache License 2.0からAGPL(GNU Affero General Public License) v3に切り替えた。同社はAmazon Web Services(AWS)と収益分配契約を結んでいるが、AWSがGrafana Labsに支払う料金はAWSの裁量に任されている。
調査に回答したITプロフェッショナルのほぼ半数は、BSL(Business Source License)やSSPLなどへのライセンス変更を懸念している。
OSS企業のライセンス方式については回答したITプロフェッショナルの3分の2(67%)が認識しており、3分の1(32%)はほぼ理解しているがさらなる調査が必要と答えている。残りはOSS企業のライセンスに違いがあるとは考えていなかった。
パブリッククラウドプロバイダーと競争するために、占有性の高いライセンスに移行することはOSSにとって良いことではないとITプロフェッショナルが感じていることも明らかになった。こうした変更の影響として、コストの増加(44%)、ロックインの助長(37%)、オープンソースコミュニティーへの関与の低下(34%)、オープンソース市場の成長鈍化(26%)などが挙げられた。
パブリッククラウドプロバイダーがオープンソースにどのように貢献しているかについての質問では、セキュリティが向上する(59%)、オープンソースコラボレーションが進む(48%)、既存コードの品質が向上する(43%)、クラウドでオープンソースを実行できる(43%)と回答している。
Perconaによると、たとえOSS企業のライセンスが真に「オープンな」オープンソースの崩壊につながる恐れがあるとしても、OSS企業がパブリッククラウドの影響から身を守ることに多くの回答者が同意している。
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