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破綻から復活した衛星通信会社OneWeb 世界の有力企業が出資する“納得の理由”宇宙から地球へ 高速通信の切り札

衛星を使い、高速な通信サービスを開発するOneWebは韓国のITベンダーから3億ドルを調達する他、カナダの通信事業者と覚書を結んだ。経営破綻から立ち直ったOneWebが目指すのは何か。最近の動きを追った。

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 経営破綻から立ち直って約1年、地球低軌道(LEO)衛星通信企業のOneWebが巻き返し戦略を進めている。同社は2021年8月、韓国ITベンダーHanwha Systemsから3億ドル(約330億円)の出資を受けることが決まった。カナダの通信事業者Northwestelとも覚書を交わし、パートナーシップを深めていく方針だ。

 OneWebは2012年に設立。電波を送受信する基地局と基幹通信網をつなぐネットワーク(バックホール)や広いカバレッジといった技術力を武器に、通信インフラが十分に整っていない地域でインターネット接続サービスを提供してきた。

なぜ世界の有力企業はこぞって「OneWeb」に出資するのか

 米国と英国に開発拠点を置くOneWebは、最先端の衛星技術に注力している。Space Exploration Technologies(SpaceX)が手掛けるプロジェクト「Starlink」のように、衛星を使って低コストながら高速な通信サービスの開発を目指していた。しかし開発が難航し、OneWebは資金調達の失敗から2020年3月に、米国で連邦倒産法第11章に基づいて破産保護を申請した。

 そうした中で救いの手を差し伸べたのは、英国政府主導のコンソーシアムとインドの通信企業Bharti Globalだった。OneWebは2021年7月、両者からそれぞれ5億ドルの出資を受けた。同年12月には36基の衛星を打ち上げるとともに、ビジネス再開にこぎ着けた。

 OneWebは2022年をめどに、合計648基の衛星の打ち上げを目指し、そのために必要な資金を確保している。2021年8月時点では、288基の打ち上げが完了した。それを踏まえてOneWebは2021年末までに、北緯50度以北の地域向け通信サービスを開始する。

 今回OneWebに3億ドルを出資したHanwha Systemsは、モノのインターネット(IoT)技術の活用が都市部からあらゆる地域に拡大する動きを捉え、OneWebの事業成長を見込んでいる。資金以外にも防衛技術とアンテナ技術を提供し、成長を後押しする。政府顧客の開拓やサービス提供地域の拡大に関しても協力するという。

 Hanwha Systemsの投資により、2020年11月からOneWebが獲得した出資額は合計27億ドルとなった。Hanwha Systemsの出資は規制当局の承認を経て、2022年前半に完了する見通しだ。出資完了後、OneWebはHanwha Systemsから1人の取締役を迎え入れる。

 Northwestelとの覚書締結は、OneWebが北緯50度以北の英国、カナダ、アラスカ、北欧、グリーンランド、北極地域にブロードバンド通信サービスを提供するために進めていた衛星打ち上げプログラム「Five to 50」の完了を受けたものだ。覚書では、カナダ北部において共同で通信サービスを手掛けることを定めている。Northwestelのプレジデント、カーティス・ショー氏は「OneWebと手を組み、最新の衛星技術を利用して遠方の企業や政府機関に高速な通信サービスを提供したい」と期待する。

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