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開発責任者に聞くボルボの「ソフトウェア定義自動車」の取り組みソフトウェアが自動車の中心に

将来の自動車はソフトウェアで評価されると考えるVolvoは今、ソフトウェアの内製化を推し進めている。これによって同社の次世代モデルは大きく変わるという。

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 Volvo Car(以下、Volvo)はソフトウェア定義の自動車プラットフォームに基づく自動車生産の再考計画を打ち出した。同社は2030年までに全て電気自動車に切り替えることを計画している。CEOのホーカン・サミュエルソン氏は、それまでに自動車がソフトウェアによって差別化されるようになると言う。ハードウェアではなくソフトウェアで提供される機能がますます増えるだろう。

 Volvoはコンピューティングプラットフォームとソフトウェアを自社開発している。ソフトウェア定義自動車への移行は、業界にとって電気自動車への移行と同じくらい大きな変化だとサミュエルソン氏は考えている。

 Volvoのパトリック・ベンクソン氏(ソフトウェアプラットフォーム責任者)によると、自動運転車、電気自動車、コネクテッドカーに伴う変化にはソフトウェアという共通のイネーブラーがあるという。

 自動車にデプロイされるソフトウェアは量、複雑さ、価値が高まっている。ベンクソン氏は、最終的にはソフトウェアが自動車業界のあらゆる部分に影響を与え、変革し、時には混乱を招くと予想している。

 英Computer Weeklyはベンクソン氏にインタビューし、VolvoのDX(デジタルトランスフォーメーション)が自動車の製造にどのように取り入れられているかについて聞いた。

 「当社はプロセスの途中にある。自動車のアーキテクチャに目を向けると、ソフトウェア駆動型の機能がますます増えている。Teslaを除く全ての自動車メーカーは、これまでサプライヤーに依存してソフトウェアを調達していた」

 Volvoの目標は、ソフトウェアが提供するあらゆる利点を活用することだ。ソフトウェア定義自動車では、主要機能がソフトウェアによって提供される。ソフトウェア定義自動車はサスペンションやエンジンの種類で評価されるのではなく、ソフトウェアが提供する機能や特徴に基づいて分類されるようになるとベンクソン氏は語る。

 ベンクソン氏は以前、Volvoのインフォテインメントとドライバーインタラクションソフトウェアの開発を率いていた。この新しいインフォテインメントシステムの経験がソフトウェア定義の未来を開いたと同氏は話す。「2017年にインフォテインメントシステムを開発したとき、当社は『Android』に移行した」(ベンクソン氏)。サプライヤーからインフォテインメントシステムを調達していたVolvoにとっては大きな一歩だった。

 Volvoの自動車は、約180個のコンピュータを使っている。ベンクソン氏は、コンピューティングモジュールをコアコンポーネントに移行することでコンピュータの数を減らしていると言う。2022年発表予定の新しいVolvoモデルに初めて導入されるコンピューティングシステムは3つのメインコンピュータで構成される。各メインコンピュータはビジョン処理とAI、汎用(はんよう)コンピューティング、インフォテインメントの運用を相互にサポートする。

OSのOS

 Volvo初のSUV(スポーツ用多目的車)を含め、次世代の純電気自動車は独自OS「VolvoCars.OS」を搭載する予定だ。「VolvoCars.OSに接続するシステムとソフトウェアスタックは全て社内で開発している。重要なのは、開発者が全ての自動車センサーにアクセスできるAPIを構築することだ」(ベンクソン氏)

 目的は自動車とクラウドにまたがるさまざまなOSを統合し、単一のOS環境を構築することだ。これに組み込まれるOSには「Android Automotive OS」「QNX」「AUTOSAR」「Linux」などがある。

 リアルタイム処理は自動車のメインコンピュータが実行する。追加機能はクラウドでも提供する。

 ベンクソン氏は、Volvoが採用するアプローチによってより迅速かつ柔軟な開発が可能になり、顧客の自動車をより頻繁に更新できるようになると言う。「目標はVolvoの自動車によって日常を快適にすることだ」。これはスマートフォンが無線でOSをアップデートして新機能を受け取る方法に似ている。

 だが、スマートフォンのユーザーはどこかの時点で新しい端末にアップデートしたいと考えるかもしれない。ベンクソン氏によると、Volvoの自動車に搭載されているハードウェアはアップグレードできるようになっているという。

 ベンクソン氏のソフトウェア定義自動車についての話で興味深かった点は、ベースモデルとハイエンドモデルの基本コンポーネントが同じだということだ。付加価値は新しいソフトウェア機能を有効にすることで生まれる。

 例えば、インフォテインメントシステムの標準オプションを購入し、より高性能なインフォテインメントシステムを有効化するためにソフトウェアアップデートを買うことも可能だ。同様に、電気自動車のバッテリー寿命と走行距離を改善するために無線アップデートを展開することもできる。

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