「サイバーセキュリティ保険」はランサムウェアへの“万全な備え”になるのか?:ランサムウェア攻撃の身代金は支払うべきか【第4回】
企業がランサムウェア攻撃を受けた際の復旧にはサイバーセキュリティ保険を活用できる。一方で専門家は、ランサムウェア攻撃が活発化する中でサイバーセキュリティ保険の懸念点を指摘する。それは何なのか。
「サイバーセキュリティ保険」は、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃の被害からの復旧を支援する。サイバーセキュリティ保険は身代金の支払いをカバーするだけでなく、ダウンタイムの発生に伴う補償、データ復旧作業、被害範囲の調査にかかるコストなどを支援するものもある。
「サイバーセキュリティ保険」はランサムウェア対策に有用か
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連載:ランサムウェア攻撃の身代金は支払うべきか
- 第1回:「ランサムウェア攻撃」に遭った企業が身代金を払いたくなる4つの理由
- 第2回:「ランサムウェア攻撃」を受けても身代金を払ってはいけない4つの理由
- 第3回:「ランサムウェア攻撃の身代金支払いは、いずれ違法になる」と専門家が考える訳
ランサムウェア攻撃の被害事例
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ここ数年、サイバーセキュリティ保険の人気が高まっている。米政府説明責任局(GAO)のレポートによると、米大手保険会社Marsh & McLennanの顧客のうちサイバーセキュリティ保険を導入した企業の割合は、2016年の26%から2020年には47%に上昇した。
身代金の支払いをカバーするコストの高騰を乗り切るため、保険会社は保険料と保険の対象範囲をきめ細かく調整し始めている。身代金の支払い、ビジネスの中断の補償、第三者に裁判を起こされるリスクなど、保護対象を細分化している。「保険を申し込もうとしても、見積もりを出してもらえない場合がある恐れがある」と、米TechTarget傘下の調査会社Enterprise Strategy Groupのアナリストであるデーブ・グルーバー氏は説明する。
保険会社に法外な保険料を設定されたり、サイバーセキュリティ保険の対象外にされたりする可能性を下げるために、企業は自社に必要な補償範囲を見極めるとよい。多要素認証の実装やデータバックアップ、パッチ適用などを通じて、ランサムウェア攻撃のリスクを軽減できる。
身代金を支払うべきかどうかは簡単な決断ではない
調査会社Gartnerのアナリストであるポール・プロクター氏によると、被害企業が身代金を支払うかどうかを決断するときは、業績の観点から決めるとよい。攻撃者によってデータが盗まれたり暗号化されたりすると、被害企業にとっては、いつからいつまでの業務に、ひいては業績にどの程度の影響が及ぶかが問題になる。「企業は、身代金を支払って“賭けに出る”ことが、ビジネス上の損失を埋めるのに値するかどうかを検討しなければならない」とプロクター氏は話す。
企業がランサムウェア攻撃からの復旧を容易にし、身代金を支払いたいという誘惑を抑えるには、次のベストプラクティスを実践するとよい。
- 事業継続計画(BCP)とセキュリティトレーニングに投資する
- BCPでは、データのバックアップおよび復旧に関するプロセスを定める。
- 一度作成したら変更、削除、上書きできない「イミュータブルバックアップ」を検討する
- ダウンタイムを最小限に抑えられるように、IT担当者にデータ復旧のトレーニングを実施する
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