医療機関がクラウド利用前に考えたい「脅威モデリング」と「セキュアコーディング」の意義:医療機関のクラウド移行、リスク管理のヒント【第3回】
システムをクラウドサービスで展開するに当たり「脅威モデリング」と「セキュアコーディング」がなぜ重要なのか。サイバー攻撃の標的にされやすい医療機関だからこそ重視すべき脆弱性対策のポイントは。
医療機関がクラウドサービスに展開したシステムのデータを保護するには、以下の4つのテーマについて考察する必要がある。第2回「医療機関が初心に立ち返って見直すべき『データセキュリティ』の意義と対策」に続き、第3回となる本稿は2〜3番目のテーマについて解説する。
- データセキュリティ対策強化を必須事項だと認識する(第2回で紹介)
- 「脅威モデリング」で脅威を特定する
- 「セキュアコードレビュー」を通じて設計とセキュリティを両立させる
- セキュリティ対策をクラウドベンダー任せにはできないことを理解する(第4回で紹介)
2.「脅威モデリング」で脅威を特定する
脅威の特定に向けた取り組みを次の段階に進めるためには、セキュリティツールや自動化技術では特定できない「設計上の欠陥」に注目する必要がある。DevSecOps(開発、セキュリティ、運用の融合)を担当するチームは「脅威モデリング」によって、これを実現できる。
医療機関が脅威モデリングに取り組む際は、批判的な思考と賢明さが必要だ。脅威モデリングを使って、システム内にどのような資産があるのか、注意すべき攻撃者は誰かを特定する。その情報に基づいて、攻撃者がIT資産に到達するために使用する脅威経路を割り出す。そして脅威がどのように発生するかを判断し、認証、承認、暗号化、エラー処理、ログ記録などの適切な管理が実施されているか点検する。
3.「セキュアコードレビュー」を通じて設計とセキュリティを両立させる
アプリケーションセキュリティチームとDevSecOpsチームが協力して、セキュアコードレビュー(SCR)プロセスを実行することによって、クラウドサービス導入前にシステムの脆弱(ぜいじゃく)性を修正できる可能性がある。
脅威モデリングと同じように、SCRは手動プロセスであり、自動セキュリティスキャンでは検出できない脆弱性を特定するものだ。ソースコードの1行目が書かれる前、あるいはソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)のできるだけ早い段階でSCRを導入することによって、クラウドサービスにシステムを展開する前に実際の脆弱性を特定できる。これはチームの生産性を向上させ、将来の外部からの攻撃を阻止するのに役立つ。好都合なことに、SDLCでの発見が遅過ぎた脆弱性をテストするコストを削減できるというプラスの効果もある。
第4回は、4番目の「セキュリティ対策をクラウドベンダー任せにはできないことを理解する」について解説する。
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