「ギガビット回線」は学校をどう変えたのか? 英国が1000校以上に回線整備:英国が取り組む教育機関のブロードバンド戦略【前編】
1000校以上の教育機関を対象に、1Gbps以上の高速回線を整備する英国政府。高速データ通信の手段を手にした教育機関では、どのような変化が起きているのか。
英国政府は、1Gbps以上のデータ通信速度でインターネットに接続できる高速回線(ブロードバンド)の利用エリアを英国全土に拡大させるインフラ戦略を進めている。同政府は2021年10月、このプロジェクトにより1000校以上の教育機関に通う学習者が、ブロードバンドを利用できるようになったと発表した。
「ギガビット回線」が教育機関にもたらした“これだけの効果”
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英国全土に広がるフルファイバーブロードバンド(注1)は現在、比較的低速の回線を利用していた1084校の教育機関と、その他の公的施設に1Gbps以上のブロードバンドを供給している。今やこうした施設でも、教員や学習者はWeb会議ツールなどのデジタルツールに加えて、映画や教育用ゲームなどのデジタルコンテンツを存分に利用できるようになった。光ファイバーを使ったブロードバンドは、教員が業務中にデジタルコンテンツの読み込み中画面を見つめる時間を減らし、授業の計画や実行に時間を費やせるようにした。
※注1:ユーザーの下まで直接光ファイバーケーブルを引き込むことで高速データ通信を実現するサービス。
一般的に英国の教育機関は都市または郊外にあり、既にフルファイバーブロードバンドに接続している。政府が新たにインフラ投資をした教育機関は、ブロードバンドが利用できず、インターネットサービスプロバイダー(ISP)によるアップグレードが見込める回線も敷かれていない施設だ。こうした教育機関は農村部や遠隔地など回線が行き届きにくい地域にあり、政府が支援に踏み込んだ。
ノーフォーク(115校)、ウルバーハンプトン(81校)、ノース・ヨークシャー(45校)、ハイランド(37校)、ダンフリース・アンド・ギャロウェー(35校)などの地域が、フルファイバーブロードバンドへのアップグレードを実施した。英国政府は、さらに多くの教育機関に1Gbps以上のブロードバンドを提供するための作業を進めており、2022年3月までに884校が接続する。
英国政府は1000校を超える教育機関へのフルファイバーブロードバンドへの接続を発表するに当たり、ブロードバンドが教育機関にもたらす初期効果と、今後期待できる効果を調査する報告書を公表した。調査対象は、政府が進めるプログラム「Rural Gigabit Connectivity(RGC) Programme」(注2)に従ってフルファイバーブロードバンドに接続した261校だ。調査によると1Gbps以上のブロードバンドを使う利点は、教職員や学習者の時間の節約、学習者の学習体験の向上、ネットワーク速度の遅さに対する教職員の不満の軽減などだった。
※注2:1Gbps以上のブロードバンドを英国全土に広めるために、ネットワークへの商業投資を受けにくい地域での導入を政府が支援するプログラム。
後編は、英国がネットワーク戦略を今後どのように展開するかを紹介する。
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