米国の事例に見る、従業員の「犯罪歴」や「SNSの発言」を継続調査することの是非:従業員の身元調査にまつわる是非【後編】
企業や事業内容によっては、従業員の採用後にも継続的な身元調査をする場合がある。企業は「犯罪歴」や「ソーシャルメディアの発言」などを継続調査する意義をどのように捉えているのか。米国の事例を紹介する。
中編「優秀な従業員を失う可能性があっても、“あの業界”が採用後の身元調査を継続する理由」に続く後編は、従業員の犯罪歴やソーシャルメディアの発言を継続調査することの是非について、米国の事情を基に専門家の見解を紹介する。
米国で従業員の犯罪歴を追跡することの是非
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「従業員に対して継続的な身元調査を実施することで、顧客は安心してサービスを利用できる」。こうした意見がある一方で、「逮捕記録は身元調査での利用を想定したものではない」と話すのは、Rutgers University Newark(ラトガーズ大学ニューアーク校)の刑事司法スクールで准教授を務めるサラ・エスター・ラゲソン氏だ。ラゲソン氏によると、米国の逮捕記録には指紋が付属していない場合があったり、内容が不正確だったり、逮捕された人物の身元情報に裏付けがなかったりする場合がある。「逮捕が合法的かどうかすら、われわれには分からない。逮捕記録は、検察官や裁判官が目を通す前段階の情報だ」(同氏)
それでも、ある身元調査会社は、継続的な調査には強力な論拠があると考えている。「求職者が最初の身元調査を通過したとしても、採用後、時間がたてば情報に変化が生じる」と、身元調査会社First Advantageで最高プロダクト責任者を務めるランジーブ・ティーロック氏は指摘する。身元調査では、弁護士資格といった専門資格の有効期間もチェックする。資格失効者がいると企業を危険にさらす恐れがあるためだ。
ティーロック氏によると、誰かが逮捕され、収監された場合、First Advantageはその逮捕を15分以内に把握できる。米国で誰かが逮捕された際、その情報は警察の収監管理システムに記録される。収監管理システムに記録されたデータは一般には公開されていない。だが「米国政府と契約を交わし、データへのアクセス権限を持つ従業員がいる企業は、収監管理システムに保存された逮捕記録にアクセスできる」と同氏は話す。
従業員のソーシャルメディア投稿を追跡する是非
First Advantageはソーシャルメディアのモニタリングサービスも提供している。だが従業員を監視する「支配者」になることを雇用側が嫌うことから、あまり企業に採用されていないという。しかも「ソーシャルメディアに投稿される情報は、解釈次第で意図が変わる」とティーロック氏は述べる。
これに対し、University of Florida(フロリダ大学)でソーシャルメディア学の教授を務めるアンドルー・セレパック氏は、従業員のソーシャルメディアのモニタリング、すなわち「ソーシャルリスニング」を企業が実施するのは良い慣行だと考えている。従業員の中には、ソーシャルメディアへの投稿が自分や企業の評判に影響しかねないことを理解していない人もいるためだ。
「従業員の投稿は業務の延長だと見られかねない」とセレパック氏は述べる。最近では、炎上する議論に巻き込まれた従業員を解雇するための燃料としてソーシャルメディアが使われるケースもある。「従業員のモニタリングは、危機に正面から取り組む上でも得策だ」と同氏は語る。
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