ローコードツールとノーコードツールを区別すべき納得の理由:メリットは全く異なる
ローコードツール/ノーコードツールは同じではない。目的もメリットも異なる。両者を単に「開発の効率化」に寄与するツールであると考えるべきではない。
ローコードツール/ノーコードツールの価値は理解されている。だが両者の区別は明確ではない。これは業界の説明の仕方にも問題がある。
フルコーディングでソフトウェアを開発してテストすることに比べたら、ローコードツールとノーコードツールのメリットはほぼ変わらない。両者を区別するには、そもそも両者が存在することになった動機を思い出すことが重要だ。それは、コードが書けない人でも自動化に貢献できるようにし、より価値の高い仕事をするために熟練開発者を解放することだ。
名称から分かるように、ローコードツールではある程度のコーディングが求められる。ローコードツールは、プロの開発者がアプリケーションを素早く構築するための強力な資産となる。ローコードツールによって浮いた時間を他の仕事に回すことで、より多くの価値を生み出せるようになる。手作業よりも効率は上がるが、ローコードツールがあらゆるユースケースにとって完璧なソリューションになるわけではない。
ソフトウェアエンジニアの不足を経験している企業は64%に上る。ローコードツールが使えるエンジニアを見つけるのも非常に難しい。
問題は、技術に詳しくないユーザーはコードに依存するツールをうまく使えないことだ。
ノーコードなら解決
ノーコードツールは、技術に詳しくないユーザーを前提にしている。対象ユーザーは、業務を理解しているがコーディングの経験がほとんどまたは全くない人だ。そこには、業務担当者や特定分野の専門家がアプリケーションを迅速かつ容易に構築・テストして業務に実装できるというメリットがある。
ノーコードツールは、シンプルで機能が限定的なアプリケーションを作成するものと考えるのが一般的だった。以前ならこの前提は正しかったかもしれない。だが、ノーコードツールを支える技術は大きく進化した。DX(デジタルトランスフォーメーション)の高度なユースケースや規制当局の審査が最優先される金融サービスのような分野でも使われるケースが増えている。
重要なのは、ノーコードツールならば技術に詳しくないユーザーでも技術的なユースケースにセルフサービスで対応するのに役立つが、ローコードツールではそうはならないことだ。ノーコードツールはイノベーションやDX戦略を加速するだけでなく、生産性を大幅に向上させる。チームはより充実した仕事を遂行でき、結果として従業員の満足度や定着率が向上する。
私見だが、ローコードツールやノーコードツールは、業界の人材プールの開発者ではなく自社内の開発者を解放するものと考えられることが多い。社内の開発者を解放することが目的ならば、どちらも役に立つ。だが、より適切な役割を果たすためには包括的なアプローチではなく、各問題を個別に認識して各ユースケースに適切なソリューションを推奨する必要がある。
多くのコードを必要とするアプリケーションがなくなることはない。そのため開発者は常に必要だ。重要なのは、各問題にとって適切な手法を見極め、業務の拡大を加速させつつ、障害が起きるリスクを最小限に抑えて、アプリケーションの品質を最大限に高めるようにローコードツールとノーコードツールの定義を具体的に示すことだ。
スネ・エンシグ氏はLeapworkのチーフエバンジェリスト。
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