企業は本当に“従業員監視”をしたがっているのか? 監視以外で本音を知る方法:Amazonの騒動から学ぶ「従業員の本音を知る方法」【後編】
従業員の考え、本音を知るために従業員監視ツールは役立つのだろうか。こうしたツールを使わずに従業員の本音を知る方法はあるのだろうか。こうした疑問に対する答えを探る。
法律事務所Clark Hillで労働問題や雇用問題を担当する弁護士のポール・スタークマン氏によれば、一般的に企業は従業員が構成するコミュニティーを監視対象にしていない。従業員が交流のために使うコミュニケーションツールやWebサイトを監視対象としている場合でも、不謹慎な表現がないかどうかを確認することが主な目的だ。
“従業員監視”のニーズは本当にあるのか?
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連載:Amazonの騒動から学ぶ「従業員の本音を知る方法」
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「従業員の監視にリソースや時間を割ける企業はほとんどなく、監視をしたがってもいない」とスタークマン氏は述べる。従業員監視ツールを使用する場合、従業員の不満を招いたり、離職率を高めたりするリスクが伴うと同氏は指摘する。
従業員のコミュニケーションを監視しなくても、従業員の悩みを把握する手段はある。
調査会社Remeshが提供する同名の「HR Tech」(人事とITの融合)ツールには、メッセージングアプリケーションを使って従業員の意見を匿名で集め、自動で内容をまとめ、分析する機能がある。この機能は、管理職が従業員に対し、会議中にリアルタイムでフィードバックを求めるといった用途で使える。同社の共同創業者で最高経営責任者(CEO)であるアンドリュー・コンヤ氏は「Remeshは人工知能(AI)技術を活用し、さまざまな意見の中から『最も重要』『最も代表的』だと思われる意見を抽出し、優先順位を決める」と説明する。
従業員監視ツールの導入には2つの大きなリスクがあるとコンヤ氏は考えている。「真実の見落とし」と「従業員の離反」だ。
コンヤ氏は次のように説明する。従業員同士の会話内容を「企業が適切だと考える内容」に誘導したり、結果的に会話を抑制したりするシステムを利用することは、本来雇用主が知るべき重要な真実を遠ざけるリスクを生む。従業員が「抑圧されている」「発言を封じられている」と感じる状況を作り出し、退職してしまうこともリスクの一つだ。
「雇用主が目指すべきは、真実を伝えれば誠実に対処してもらえるという信頼感をお互いが持てる状況を作り出すことだ」とコンヤ氏は語る。
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