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「テープ」は死んでいなかった 突然息を吹き返した“謎”の事態よみがえったテープ人気は続くのか【前編】

2020年に出荷容量が落ち込んでいた「LTO」のテープは、2021年に大きな盛り上がりを見せた。その背景には、企業が無関心ではいられない“ある事情”があった。

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 テープ規格「LTO」(リニアテープオープン)を策定する業界団体「LTO Program Technology Provider Companies」(以下、TPCs)によると、テープの出荷容量は2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けて落ち込んだ。だが同団体は、テープの出荷容量は増え続けるはずだと踏んでいた。2021年、この予測は的中した。

落ち込んだ「テープ」の出荷容量が復活 その裏にある深い理由とは

 TPCsが2022年4月に発表した年次レポートによると、2021年におけるテープの出荷容量は過去最高の148EB(圧縮時)だった。2020年の出荷容量105EB(圧縮時)と比べて40%以上の増加と、前年を軽々超えた。企業の従業員がテレワークからオフィスに戻ってきたこと、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)対策としてテープによるオフラインでのデータ保管の需要が高まっていることなどが背景にある。

 2020年はCOVID-19のパンデミック(世界的大流行)を受けて、データセンターにおける投資を保留する動きが強まった年だった。TPCsを構成する一社、IBMのテープ部門でマネジャーを務めるカルロス・サンドバル氏は「企業はデータセンターに入ってテープを使ったり、導入したりできなくなった」と振り返る。一方で利用が広がったのは、自宅にいながらでも利用できるクラウドサービスだった。

 状況は変わりつつある。サンドバル氏は「世界がパンデミックを脱するという観測を背景にして2021年は投資が戻ってきた」と分析する。パンデミックがなければ2020年も過去最高の出荷台数を更新するとTPCsは見込んでいた。

ランサムウェア、地球環境問題がテープ利用の追い風に

 調査会社IDCのリサーチバイスプレジデントのフィル・グッドウィン氏は、ランサムウェアがテープ需要を高める主要因になっていると分析する。ランサムウェアはパンデミックが発生する以前から企業にとっての脅威だったが、パンデミックがランサムウェアの拡散を助長した。テレワーカーのセキュリティが脆弱(ぜいじゃく)になることを攻撃者が狙うからだ。

 ランサムウェアの攻撃者はテレワーカーの端末を介して、企業のネットワークに侵入する。このリスクは依然として存在しており、それがテープの需要を高めるのだとグッドウィン氏は指摘する。テープカートリッジは企業のネットワークから切り離したデータ保管が可能であるため、ランサムウェア被害を抑止しやすい。

 テープの需要を高めるもう一つの要因は、二酸化炭素(CO2)排出の抑制に向けた動きが強まっていることにあるとグッドウィン氏は考えている。テープカートリッジは常に通電しておく必要はないため、消費電力量とCO2排出量を抑制できる可能性がある。グッドウィン氏は「『データセンターのCO2排出量を削減する方法は何か』という問い合わせが増えている」と言う。頻繁には使わないデータをテープに保存することがCO2排出削減につながると同氏は説明する。

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