メジャー球団は「データ」で勝つ レンジャーズが実践する「Tableau」活用術:データ分析が変えた野球の常識【第4回】
総合的な統計データはMLBが提供する。だがテキサス・レンジャーズは他球団との競争で優位に立つべく、「Tableau」を駆使しているという。どのように活用しているのか。
米プロ野球のMLB(メジャーリーグ機構)に所属する球団テキサス・レンジャーズ(Texas Rangers)は、Tableau Softwareのセルフサービス型ビジネスインテリジェンス(BI)ツール「Tableau」を日常的に使用している。
レンジャーズは「Tableau」をこう活用している
併せて読みたいお薦め記事
連載:データ分析が変えた野球の常識
- 第1回:MLB公式の分析ツール「Statcast」にある“あのデータ”とは?
- 第2回:メジャー強打者はなぜ「4番」じゃないのか データが変える野球の常識
- 第3回:メジャー球団のデータ専門家は「分析文化」をどう定着させたのか?
データに基づく意思決定を実現するために
「Tableau」を使いこなす
試合がある日のレンジャーズは、試合開始時刻の約6時間前から活動を始める。試合開始時刻は、デーゲームでは午後1時、ナイトゲームでは午後7時が通常だ。活動開始時には、アナリストであるランドール・パルファー氏をはじめとする球団のデータ専門家は、前日の試合のTableauレポートを選手やスタッフのために準備し、選手やコーチが球場に到着したら一読できるようにロッカーに入れる。データ専門家は、どのような質問にも答えられるよう準備する。
こうした毎日のレポートは、主に前日の試合のみをカバーする。数字を理解しやすいようにデータを視覚化しているのが特徴だ。データ専門家は投手と野手向けに、各自の役割に基づいてレポートを調整する。「レポートはできる限りシンプルにしている」とパルファー氏は語る。「選手は数字だらけのレポートを見ることを最も嫌がる。ひどい試合だった後は特にそうだ。覚えるべき重要なデータだけを抜粋しているレポートが求められる」(同氏)
通常は午後3時ごろになると、さまざまな選手がグループごとにミーティングを開く。例えば特定の打者に対する守備位置の確認など、もうすぐ始まる試合に向けて戦略を復習する。さらに前日の試合を振り返る。
試合開始時刻の2時間前になると、パルファー氏を含むデータ専門家は選手やコーチが試合に持ち込む資料を準備する。Tableauで作成したレファレンスカードがその一例だ。このカードは選手が帽子にしまっておくことで、相手打者の傾向や、各選手に関する短いメモを含む、相手球団の陣容を素早く調べることができる。
MLBは試合中に球団がAppleのタブレット「iPad」をベンチに持ち込むことを許可しており、球団はいつでもレポートを参照できる。そのためレファレンスカードは、選手やコーチが手元に持って素早く思い出せるようにデザインされている。「レファレンスカードを作ったり、使われているのを見たりするのは楽しい。願わくは、それが勝利に役立ってほしい」とパルファー氏は語る。
試合後には、データ専門家は集めたデータに基づく簡単な振り返りを実施する。とはいえ選手やコーチを家に帰さなければならない。そこでTableauで簡単なレポートを作成し、選手やコーチがレポートを自宅に持ち帰って翌朝に見られるようにしている。
パルファー氏によると、レンジャーズの分析部門はデータを使って球団の強みにする方法を常に模索しており、データ主導の文化を実現している。「まだ改善途中ではあるものの、年々うまくなっている」と同氏は語る。物事を複雑にするのは簡単だが、物事をシンプルにするのは難しい。分析部門の目標は、膨大なデータをまとめて、選手がフィールド上でパフォーマンスを発揮するために必要な、重要なデータに絞り込むことだと同氏は説明する。
プレー中にデータがあり過ぎると危険を招く恐れがある。自分の方に向かって時速100マイルのボールが飛んでくる中で、データ分析について思いを巡らせるのは選手にとって危険だ。Tableauを使用することで、レンジャーズではパフォーマンスを妨げるのではなく、強化するための理解しやすい方法で、重要なデータを提供できている。
「シンプルであることが最優先事項だ」(パルファー氏)
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.