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「この人、仕事辞めちゃう?」が分かる“退職のサイン”はこれだ「クワイエットクイッティング」を知る【後編】

離職リスクの判別方法を研究する専門家によると、従業員が退職を考えたときに見せる兆候は幾つかある。こうした兆候と「クワイエットクイッティング」との関係は。

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Gartner | 人事


 ユタ州立大学(Utah State University)経営学准教授のティム・ガードナー氏は、離職リスクの判別方法を研究している。同氏の研究から見えた、従業員の離職兆候とはどのようなものなのか。

“この兆候”がある人は会社を辞める?

 米国企業の間では従業員の離職率が高まっており、雇用市場は活況を呈している。このことから米国の労働者は失業を恐れなくなり、「クワイエットクイッティング」(静かな退職)が広がる可能性がある、と専門家は指摘する。調査会社Gartnerによれば、クワイエットクイッティングは「今の勤務先を辞めないが、必要最低限の仕事しかしない従業員の働き方」を表す言葉だ。

 ガードナー氏は他の研究者と共同で、管理職を対象とする調査を一定期間にわたって実施し、従業員の行動の変化について回答を求めた。その結果、13種類の離職兆候を突き止めた。その一例は次のようなものだ。

  • 仕事に対する努力や集中力、意欲、生産性の低下
  • ネガティブな言動や不満の表れの増加
  • 上司を喜ばせることへの関心の低下
  • 早退の頻度の増加

 ただしガードナー氏の調査チームが「離職兆候判別モデル」を作ったのは2016年だ。当時は「失業に対して比較的健全な不安があること」を前提としていた。

 今の勤務先を辞めないが、必要最低限の仕事しかしない――。こうしたクワイエットクイッティングを選んだ従業員はいずれ、ガードナー氏が提唱する離職兆候を示すようになる可能性があるという。それが事実であれば「企業は離職リスクのある従業員を知るための手掛かりを見分けやすくなる」とガードナー氏は説明する。

 有能な従業員が離職兆候を示しているが、引き止めたい場合はどうすればよいのか。ガードナー氏はその従業員を慰留する方法として、管理職との面談を推奨する。例えば「われわれはうまくいっているのかどうか」「何が問題になっているのか」を率直に話し合うことだ。

 調査会社Gartnerの人材分野担当リサーチ責任者のブライアン・クロップ氏によると、一部の企業は従業員監視ツールを利用して、勤務時間が短くなってきている従業員や、以前は出席していた会議に出なくなっている従業員がいないかどうかをチェックしている。勤務時の行動変化の見分け方について、管理職にトレーニングを実施する企業もある。

 クワイエットクイッティング状態にある従業員が、実際に会社を辞めようとしているかどうかは分かりにくい。だが、こうした状態にある従業員は「『頑張って働いても会社は報いてくれない」と感じている可能性がある」とクロップ氏は説明する。「企業は賃金を上げ、従業員の貢献を評価し、労力に見合う昇進と報酬を与える必要がある」(同氏)

クワイエットクイッティングは昔からある

 「従業員エクスペリエンス」(従業員体験価値)測定サービスを開発するKazooの最高経営責任者(CEO)パトリック・マンツォ氏は、「クワイエットクイッティングは新しい呼び方だが、従業員の勤労意欲や貢献度の低下は以前からあった」と話す。

 Kazooのサービスは、従業員の声を聞き、評価や報酬、実績を管理する機能を提供する。ユーザー企業は従業員個人を特定することなく、部署や組織ごとに従業員調査を実施し、感情分析を使って従業員のエンゲージメントレベル(熱意を持って仕事に取り組む度合い)を調べることができる。従業員のエンゲージメント低下に対処するには、管理職が従業員と定期的に話をし、能力開発について話し合うことが必要だという。

 マンツォ氏は、企業が従業員のエンゲージメント向上に取り組むことで、クワイエットクイッティングの主な課題は解決すると考えている。だが、いずれは雇用市場が変化して求人数が減少する可能性もある。もしそうなれば「『今と同等か、さらに良い職が半日で見つかるのだから、どのような職も替えが利く』という考え方は変わっていくのではないか」と同氏は語る。

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