「データ」で英国人の視力を守った眼鏡店は“データ分析の落ちこぼれ”だった:コロナ禍の受診控えを防いだ眼鏡店のIT戦略【後編】
英国の眼鏡店Specsaversは、店舗スタッフのデータ活用を容易にするツールを用意し、従業員にデータ分析を広める取り組みを続けている。同社データ分析チームが重視している方針は。
英国の眼鏡チェーン店Specsaversに勤める視能訓練士は、社内のデータを使って、ある傾向をつかんだ。英国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に伴うロックダウン(都市封鎖)が始まった時期に“眼科の受診控え”が起きていたのだ。Specsaversは、視能訓練士が分析したデータを国民保健サービス(NHS:National Health Service)や緑内障関連団体と共有。ロックダウン中に通常の眼科予約を継続できるように促す活動に貢献した。
10段階評価の「2」だったデータ活用の成熟度 成長の秘策は
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Specsaversを運営するSpecsavers Optical Groupのグローバルデータ担当者ヘレン・マニオン氏は、この成果に満足している。ただし同社のデータ活用プロジェクトは長期計画であり、いまだ道半ばだという。
マニオン氏がSpecsavers Optical Groupに入社した2019年3月当時、同社は「データに関して極めて未成熟だった」という。2022年の前半に経営陣からSpecsaversのデータ成熟度を10段階で評価するように求められた同氏は、下から2番目の「2」と評価していた。「3年半の歳月を費やしてデータを改善してきたが、まだ高評価は付けられない」と同氏は語る。
2025年までにデータ成熟度を10段階評価の「5」に引き上げるためには、顧客のビューを1つにまとめることが不可欠だというのが、マニオン氏の考えだ。「まだ多くの手作業が必要だ。もっと効果的にデータを使用することで得られる機会は無数にある」(同氏)
マニオン氏がSpecsavers Optical Groupに入社して間もない頃、同僚は「データ分析の文化を育てるのは不可能だ」と考えていた。2022年9月時点で、同社では150人以上がデータ分析ツールを使用している。「データの価値を同僚に納得してもらうには、研修やランチミーティングに加えて、説得を続けることが役に立つ」とマニオン氏は振り返る。中には他の従業員を説得する立場に回った同僚もいるという。
特定の誰かが、あるいは事業部門が、自社の共通データレイクを使用することに乗り気ではない場合、手段については妥協し、結果を重視するのが理にかなっている。だが時間がたてば考え方が変わることもある。「『自分のデータだから共通データレイクには追加したくない』と言っていた人が、1年後には『自分のデータが共通データレイクに見当たらない』と問い合わせてきた」とマニオン氏は語る。
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