AI技術の軍事利用【第1回】
「AIの軍事利用」は正義なのか? 専門家が指摘する“本質的な問題”とは
「AIを軍事用途に用いることは、道義的に正しい」という主張がある一方で、懐疑的な意見もある。AI倫理の専門家に詳しく話を聞いた。
「人工知能(AI)技術を軍事分野に導入することは、倫理的に正当だ」という主張がある。一方、AI倫理の専門家エルケ・シュワルツ氏はこの主張について批判的な態度を示す。
「AIの軍事利用」は正か悪か 双方の主張は?
併せて読みたいお薦め記事
脅威になり得る「AI」
英国の大学Queen Mary University of London(ロンドン大学クイーンメアリー校)で政治理論学の准教授を務めるシュワルツ氏は、「AI技術の軍事利用に対して注意や制限を呼び掛ける声が、徐々にかき消されつつある」と指摘する。
これまで世界各国の政府は、軍事作戦にさまざまなAI技術を開発、導入することに関心を寄せてきた。具体的には以下のような分野が挙げられる。
- レーザーやGPS(全地球測位システム)などを利用して、目標まで正確に誘導されるミサイルや爆弾「精密誘導兵器」
- 人間がほとんどあるいは全く介入せずに標的を選定、探知、交戦できる自律型致死兵器システム「LAWS」
- 前線で戦う部隊のために軍需品や食料などを供給する兵站(へいたん)や資源の管理
シュワルツ氏によると、AI技術の軍事利用を正当化するさまざまな主張がある。例えば、「AI技術の軍事利用は戦争の長期化を防ぎ、犠牲者を減らすことにつながるため、道義的責務に基づく」という主張だ。他にも「仮想敵国に対する技術的優位性を確保するのに軍事用AIが欠かせない、地政学上必須な要素だ」という主張もある。
シュワルツ氏は、戦争の本質を見なければならないと訴える。「戦争は工学的な問題でも、技術的な問題でもない。技術では解決できない社会政治学の問題だ。それなのに各国は、戦争に新しい技術を投入し、事態を悪化させる取り組みをしている」(同氏)
2023年2月中旬、軍事領域における責任あるAI利用について議論する世界的サミット「Responsible Artificial Intelligence in the Military Domain」(REAIM)が開催された。同サミットに出席したシュワルツ氏は、次のように振り返る。「サミットで各国の政府代表は、AI技術の軍事利用に不安を抱きつつも期待を膨らませていた。平和を実現するためにAI技術をどう使うかについて話したのは、フィリピンの代表者だけだった」
第2回は、AI技術の軍事利用の事例や、課題について解説する。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」攻略ガイド:効率的に落札するためのポイントを徹底解説 -
製品資料
[株式会社うるる] 入札情報に特化した「販路拡大」「効率化」のためのサポートツールとは? -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] 公共入札に成功する企業と失敗する企業の「5つの違い」 -
製品資料
[日本ビジネスシステムズ株式会社] 専門家が教える、Microsoft 365の「テナント統合/分離」を成功に導く秘訣 -
製品資料
[rakumo株式会社] Microsoft 365での情報埋没を防ぐ、社内ナレッジを資産化する情報ポータル活用
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
PHP脆弱性「PHP2Shell」で2260万件に影響 情シスの緊急チェックリスト
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
「Microsoft 365」が乗っ取られる MFAを破る“本物の画面”の恐怖
-
5
「Windows」の不要なファイルを安全に消して容量を空ける方法
-
6
生成AIが普及しても「技術書」を手放せないエンジニアの本音
-
7
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
8
Microsoft 365移行で露呈した標準機能の限界 地方銀行は上長承認や「脱PPAP」をどう実現?
-
9
Microsoft 365導入後も稟議は「Excelをメールで回覧」 承認が止まる理由
-
10
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
3
2026年のサイバーセキュリティには何が必要か? 最新データに学ぶ傾向と対策
-
4
経験豊富な即戦力人材に直接アプローチできる、「攻めの採用」への転換術
-
5
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
6
SASE選定は「見極め力」で大きな差――本当に必要な製品を選ぶための6つの視点
-
7
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
8
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
9
AI駆動開発のスピードと安全性を両立 「品質・セキュリティ管理」の実践ガイド
-
10
「標的型攻撃メール」事例・サンプル集
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー