ロシア企業にとって「ITベンダー撤退」が“完全な悲報”ではない裏事情:ロシアで広がるライセンス違反【前編】
ウクライナ侵攻により、ロシアからIT企業が次々と撤退した。撤退に伴い、同国内の企業はライセンス期間の終了をもってIT製品やサービスを使用できなくなる。その対策に乗り出したロシア政府の答えは。
ロシアでIT製品の違法な利用が深刻化しそうだ。ロシアによるウクライナ侵攻と、それに続く経済制裁を受けて、さまざまなIT企業が同国での事業を撤退させている。ロシア国内の企業は、撤退するIT企業が提供する製品やサービスを、基本的にはライセンス期間の満了をもって使用できなくなる。
IT企業の撤退にロシア政府が出した解決策とは
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ロシア国内の企業は一般的に、ITサービスのライセンスを1年分購入する。2、3年分を購入することはまれだ。IT企業が撤退すると、ロシア国内の企業は深刻な問題に直面する。ロシアの大企業や中堅企業は、自社のITインフラの構築において西側諸国のIT企業が提供する製品やサービスに依存してきたためだ。
2022年7月時点で、ロシア国内の一部の企業ではライセンス更新の問題に直面したという。特に、Cisco SystemsやIBMをはじめとした世界的なIT企業が提供する製品やサービスを利用するロシア企業が窮地に立たされることになる。
ロシアの日刊紙『Vedomosti』に専門家が寄稿した記事によると、同国の企業がその動向を最も懸念している製品が、IBMが2008年から提供しているサーバ「Power Systems」だ。記事によると、さまざまな分野の企業の間で、大規模なデータセットの格納と処理に使われてきたという。
ロシアの民間航空会社Aeroflot(アエロフロート)は2022年、Power Systemsを購入する計画だったものの、2022年2月に始まったウクライナ侵攻により変更を余儀なくされた。
Cisco Systemsの製品は、主に大企業や通信事業者が使用するネットワーク機器として存在感を示している。ロシアの電力会社Rossetiや、地質調査を実施する国営企業Rosgeologiaが同社の顧客だ。本件についてコメントを求めたが、両社からコメントは得られなかった。
そのような状況でロシア政府が出した解決策が「並行輸入」の実施だ。並行輸入とは、商品の製造元や販売元と契約を結んだ正規の代理店や販売店以外の第三者が、商品の権利者に許可なくその商品を輸入することを意味する。
2022年4月、ロシア産業商務省は、一定の品目について同国への並行輸入を認める「ブランド名および品目リスト」(並行輸入を可能とする商品リスト)を公表、同年5月に施行している。ロシア政府が並行輸入を許可したことで、同国内の企業は、撤退するIT企業からの許可を得ずにサービスや製品を使用することが可能となる。
後編は、並行輸入の実施でロシア国内のIT利用に伴う問題が解決するのかどうかを整理する。
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