「5G」に投資したら“大損”なんてことも? なぜもうからないのか:露呈する5Gビジネスの現実【中編】
「5G」にはIoTをはじめさまざまな用途の引き合いがあり、市場は今後も拡大すると考えられる。だが5Gの収益性に関する視点を忘れてはいけない。5Gには本当に期待していいのか。
「5G」(第5世代移動通信システム)のビジネスはもうかるのか否か――。これは5Gの用途によって大きく異なる。IoT(モノのインターネット)や固定無線アクセス(FWA)は、5Gの代表的な用途として期待が集まりがちだが、その話題から収益性に関する視点はいつも抜けている。ここではコストも踏まえて、5Gに本当に期待していいのかどうかを考えてみよう。
コストが数十倍になることも? だから「5G」はもうからない
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FWAは農村部に高速通信のためのネットワークインフラを構築しやすくし、IoTは各種スマートデバイスのデータ通信を実現する。移動体通信事業者(MNO)はこうした用途を実現するために5Gへの投資を進めている。だがFWAにしてもIoTにしても、ROA(総資産利益率)がどれだけになるかは明確ではない。
調査会社Juniper Researchが2022年9月に公開した報告書「5G Fixed Wireless Access」によれば、FWAは2022年に5億1500万ドルの売上高をもたらした。この売上高は、2023年には22億ドルに到達する見込みだ。
市場規模が拡大するにもかかわらず、5Gビジネスからの利益を得にくいのは、コストに問題があるからだと考えられる。MNOはコストについて明確にしていないが、PwCは5Gに関連する用途のコストや収益性について、以下のような規模になる可能性があると見積もっている。
- 拡張現実(AR)体験に掛かるコストは、一般的なモバイル通信サービスの3〜4倍
- FWAに掛かるコストは、一般的なモバイル通信サービスの22倍
- 消費者はFWAに有線回線のプランと同じ料金水準を求めているため、FWAの利益は一般的なモバイル通信サービスの30〜40分の1
IoTサービスは用途が多岐にわたるため、そのコストを一概には言えない。データ転送レート(一度に送れるデータ量)を抑えて事足りることもあれば、遠隔医療や製造現場など、より広い帯域幅(通信路容量)と低遅延を必要とする場合もある。その場合、従来のモバイル通信サービスに比べて、コストは大幅に膨らんでしまう。
コストと同様に、IoTの用途が生み出す収益については現状ではまだ曖昧(あいまい)だ。各種IoTの用途と一般的なモバイル通信サービスの収益性を比較した場合、あるIoTの用途では70分の1、ある用途では4倍以上といったように、用途によって収益性が大きく異なる。
後編は、5Gの市場を深耕し、5Gサービスを成功させるためにはまず何に着手すべきなのかを考える。
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