5Gとプライベート5Gの“兼用通信”がなぜW杯で必要だったのか NTT子会社が開発:ラグビーワールドカップ2023の舞台裏【後編】
NTTの子会社トランザテルが、フランスの自治体からラグビーワールドカップ期間中に安全を確保するためのシステムを受注した。同社はどのようなシステムを開発したのか。
フランスで2023年9月8日(現地時間)に開幕したラグビーワールドカップ2023は、選手だけではなく自治体や通信事業者も活躍している。フランスの都市共同体トゥールーズメトロポールは、携帯電話接続サービスの継続性を確保するシステムの調達を目的とする入札を主催した。ラグビーワールドカップ2023期間中のスタジアム周辺地域の安全を確保することが目的だ。この入札案件では、NTTの子会社Transatel(トランザテル)が受注した。トランザテルはどのようなシステムを提案・構築したのか。
「5G」と「プライベート5G」の両方が必要だった訳
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トランザテルが提供したのは、1枚で複数の回線を利用できるマルチオペレーターSIM(Subscriber Identity Module)カードだ。これは警察や救急隊などがネットワーク接続を確保することを目的としている。
トゥールーズメトロポールは、「5G」(第5世代移動通信システム)をユーザー組織が自営網として利用できる「プライベート5G」を一部エリアに配備している。同都市共同体は、欧州連合(EU)がデジタルインフラへの投資を支援するプログラム「Connecting Europe Facility Digital」(CEF Digital)の助成金を受けて、自治体サービスの改善を目的に、プライベート5Gと、そのバックボーン(基幹通信網)を構築している。
トランザテルのマルチオペレーターSIMカードは、プライベート5Gと通信事業者の5Gの両方に接続する。トランザテルによれば、プライベート5Gのような自営網は、世界各国で工場や病院、スタジアム、大学、港湾、空港などに広がっている。そのため、警察や救急隊が自営網と通信事業者のネットワークの双方に接続できるシステムの重要性は増している。
警察官や救急救命士は絶えず移動しているため、自営網と通信事業者のネットワークのエリアを跨いでも接続が中断することなく通話を維持できることが欠かせない。トゥールーズメトロポールも、重視したのは自営網と通信事業者のネットワークの切れ目ない接続だった。
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