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「Azure Virtual Desktop」(AVD)と「オンプレミスVDI」の違いを徹底比較仮想デスクトップの移行を考えるヒント【前編】

「Azure Virtual Desktop」をはじめとしたDaaSには、オンプレミスVDIとは異なるメリットと注意点がある。既存のオンプレミスVDIを使い続けるのか、新たにDaaSを採用するのかを判断するためのポイントを説明する。

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 Microsoftの「Azure Virtual Desktop」(AVD)といったDaaS(Desktop as a Service)は、従来のVDI(仮想デスクトップインフラ)に代わる、仮想デスクトップ配信の主要な手段になりつつある。ただし全ての企業にAVDの利用が適しているとは限らない。

 AVDとオンプレミスVDIには、それぞれにメリットとデメリットがある。既存のオンプレミスVDIからAVDへの移行作業は複雑になりがちで、問題が発生しやすい。ユーザー企業はAVDに移行すべきか、オンプレミスVDIを維持するかを慎重に検討する必要がある。両者の主な違いを理解して、AVDに移行するかどうかを決めることが欠かせない。

徹底比較:「Azure Virtual Desktop」(AVD)と「オンプレミスVDI」の違い

 AVDのメリットの一つは、仮想デスクトップの数の増減がしやすい点だ。AVDを導入すれば、企業は需要の変動に応じて、仮想デスクトップの数を容易に増やしたり減らしたりできる。

 さまざまな種類のデバイスからインターネットを経由して仮想デスクトップを利用できる点も、AVDの特徴だ。安全なアクセスを可能にするために、多要素認証や暗号化、ロール(役割)に基づいたアクセス制御といったセキュリティ対策機能を組み込んでいる。AVDはMicrosoftが管理するマネージドサービスであるため、IT部門はインフラを管理する必要がない。

 AVDには注意点もある。リソースやライセンスの管理に関わる初期設定は、複雑な作業になりがちだ。エンドユーザーのインターネット接続の状態によっては、仮想デスクトップの使い勝手が低下する可能性があることにも注意が要る。

 AVD特有のデメリットとしては、サービスがMicrosoftのクラウドサービス群「Microsoft Azure」(以下、Azure)に依存していることが挙げられる。Azureで障害が起きた場合、全ての仮想デスクトップが使用できなくなる可能性がある。サブスクリプション型のオフィススイート「Microsoft 365」といったMicrosoftの他のクラウドサービスでは、繰り返し障害が発生している。

 クラウドサービスの運用コストは、オンプレミスシステムの運用コストよりも低く抑えられる可能性がある。だが使用状況やライセンスの条件によっては、総額ではクラウドサービスの方が高くつくことが珍しくない。

オンプレミスVDIを使い続ける方がよい場合とは

 オンプレミスVDIのメリットの一つは、コストを節約できる余地があることだ。例えば、既にVDIのハードウェアやソフトウェアに投資している場合、ハードウェアの次回の更新時期まで待つのが合理的だ。それを待たずにAVDをはじめとしたDaaSに移行すると、オンプレミスで投資した分が無駄になる可能性がある。

 オンプレミスVDIが組織のシステム要件を満たしているのであれば、それを維持することで導入作業の負荷が新たに掛かることはない。既存のVDIと同等の機能性をAVDへの移行で実現するには、複雑な設定作業が必要で、導入作業の負荷が掛かる場合がある。

 オンプレミスVDIは、一般的にはDaaSよりも詳細なインフラ設計や設定が可能だ。IT部門は、VDIのインフラや仮想デスクトップのOSを自由に選択できる。一方でDaaSでは、インフラやOSの選択、利用可能なセキュリティ対策などに制限がある場合がある。

 システムが複雑になると、特定のベンダーからのサポートサービスが受けづらくなることは、オンプレミスVDIのデメリットの一つだ。VDIを構成する際に複数ベンダーの製品やサービスを利用すると、トラブル発生時の原因特定がしにくくなる場合がある。DaaSはインフラとソフトウェアの両方を単一のベンダーが管理するため、サポートサービスを受けやすい傾向にある。

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