VMware vSphereのバージョン6、7、8の違い バージョンアップの利点とは?:「vSphere」「ESXi」のサポート終了を乗り切るには【第2回】
「VMware vSphere 6.0」のサポートが終了する。vSphereのバージョンアップをすることでユーザー企業はどのようなメリットが得られるのか。移行先のハードウェア選びのポイントと合わせて説明する。
VMwareのハイパーバイザー「ESXi」を含むサーバ仮想化製品群「VMware vSphere」(以下、vSphere)のバージョン6.5と6.7は、2022年10月にEoGS(End of General support:一般サポート終了)を迎えた。2023年11月にはEoTG(End of Technical Guidance:テクニカルガイダンス期間の終了)を迎える。
第1回はセキュリティの観点から、サポート切れのvSphereを利用し続けるリスクを説明した。vSphereをバージョンアップすべき理由はそれだけではない。最新バージョンのvSphereが搭載する新機能を利用することで、仮想マシン(VM)管理の効率化といったメリットが得られる可能性がある。vSphere 7.0から追加された主要機能や、バージョンアップの際のハードウェア選びのポイントを説明する。
新しい管理ツール「VMware vSphere Lifecycle Manager」と「vSphere Update Manager」の違いとは
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バージョン6.7までのvSphereでは、ESXiやVMのライフサイクル管理、パッチ(修正プログラム)の管理などを「vSphere Update Manager」(VUM)というツールで実施するのが一般的だった。vSphereのバージョン7.0からは「VMware vSphere Lifecycle Manager」(vLCM)に置き換わっている。vLCMはESXiやVMのパッチ管理に加え、ハードウェアベンダーと連携することでファームウェアの管理も可能となっている。それに加えて、vSphereのバージョン8.0には「パラレルレメディエーション」や、「ステージング」などの機能が追加されている。パラレルレメディエーションは、複数のホスト(物理サーバ)の修復作業をまとめて実行するための機能だ。ステージング機能は、本番環境にアップデートしたクラスタイメージ(ホストで実行するソフトウェアやファームウェア、VMなどの構成要素の設定)を反映する前に、動作確認を可能にする。
これらの機能によって、vSphereのバージョン7.0以降はVM群のバージョンアップやメンテナンスが容易になる。ユーザー企業のクラスタイメージの構成によってはバージョンアップの開始時間を夜間に設定したり、複数台同時にバージョンアップを実施したりといった作業が可能になる。セキュリティ対策やバージョン管理などの作業を簡素化するには、こうした機能が利用できるバージョンのvSphereに移行した方がよい。
バージョンアップに合わせたハードウェアの選び方
ハードウェアやファームウェア、ミドルウェア、ソフトウェアの運用において課題になりがちなのは、運用負荷の増大だ。仮想化基盤の運用をよりシンプルにしたい場合には、ハードウェアベンダー各社が提供しているハイパーコンバージドインフラ(HCI)が候補に挙がる。例えばDell Technologiesは、「Dell VxRail」(以下、VxRail)というHCIを提供している。同製品はサーバ仮想化ソフトウェアとしてvSphereを、ストレージ仮想化ソフトウェアとしてVMwareの「VMware vSAN」を組み込んで仮想化インフラを構成している。
VxRailは専用のVM管理ツール「VxRail Manager」を介して、ハードウェアを含めた仮想化インフラのバージョンアップが可能だ。VMwareが提供する汎用(はんよう)的なVM管理ツールであるvLCMとは異なり、VxRail Managerであれば、Dellが検証済みの構成でパッケージ化されたVMware製品群が利用できる。ユーザーはサーバやストレージ、ソフトウェア間の互換性を調べる必要がなく、各構成要素の一括バージョンアップや稼働状況の確認ができるようになる。
VMware製品を利用したマルチクラウドインフラの構築
vSphereのバージョンアップに合わせて、プライベートクラウドとパブリッククラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドや、複数のクラウドサービスを利用したマルチクラウドのインフラ構築も視野に入れるとよい。
VMwareは、ハイブリッドクラウド構築用ツール群「VMware Cloud Foundation」(以下、VCF)を同社が認定するハードウェアで利用可能にしている。オンプレミスのプライベートクラウドをVCFの認定ハードウェアで構成し、パブリッククラウドではVMware製品のクラウドサービスである「VMware Cloud」を使って仮想化インフラを構築することで、同じVCFで両方のインフラを管理できるようになる。
ハイブリッドクラウドはDR(災害対策)に役立つ。自然災害などでプライベートクラウドに大規模障害が発生したときに、パブリッククラウドへVMを一時的に移動させ、復旧後は元に戻すといった使い方が可能だ。
vSphereのバージョンアップはITインフラ改善のチャンス
vSphere 6.5がリリースされた当時に比べると、プロセッサのコア数やメモリ容量といったハードウェアのスペックは向上している。ハードウェアをリプレース(更改)することで機器の台数を削減できる可能性があるため、温室効果ガスの排出を抑えた事業活動への転換を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)という観点からも、vSphereのバージョンアップだけでなくこのタイミングでリプレースを検討することが重要だ。
これらの観点から、企業の財産であるデータやVMを守るために、最新のセキュリティ対策やバグ修正がされている新バージョンへのバージョンアップは必須だ。それを機にマルチクラウド時代に適したシステム構成や、電力効率が改善された新ハードウェアへの移行を検討すべきだ。新技術の積極的に採用し、常に新しいインフラを維持することが企業の成長につながる。
第3回は、vSphereやESXiの最新バージョンの活用方法や、最新バージョンのvSphere以外のハイパーバイザーを移行先として選ぶメリットとデメリットを説明する。
執筆者紹介
小林浩和(こばやし・ひろかず) ネットワンシステムズ ビジネス開発本部応用技術部
主にVMware製品を担当し、製品の評価・検証を実施。近年ではエッジコンピューティングやAI(人工知能)技術など、クラウドインフラに関わる先進技術の調査にも取り組んでいる。
篠崎智昭(しのざき・ともあき、「崎」は正しくは「たつさき」) ネットワンシステムズ ビジネス開発本部応用技術部
2018年からビジネス開発本部 応用技術部に所属。サーバやHCI(ハイパーコンバージドインフラ)製品担当としてプラットフォーム製品の提案や設計、検証、構築、運用などに取り組み、技術的観点からビジネスを推進している。
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