プライベート5Gは「Open RAN」でまだ面白くなる? 名門工科大が見込んだ可能性:欧州で注目集まる5Gとオープン化
リガ工科大学はIS-Wirelessと提携し、「プライベート5G」の導入を進めるとともに、産学連携の先進研究室を立ち上げる。同校はどのようなニーズを見越して、ネットワーク分野の研究に取り組もうとしているのか。
ラトビアの首都リガにあるリガ工科大学(Riga Technical University)は、教育および研究開発活動を拡大するために、「5G」(第5世代移動通信システム)をユーザー組織が自営網として利用できる「プライベート5G」を構築する。このネットワークは、仕様がオープンな無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)である「Open RAN」を採用することを目指し、リガ工科大学はポーランドの通信事業者IS-Wirelessと技術契約を締結した。
「プライベート5G」と「Open RAN」に欧州が注目
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リガ工科大学は1862年設立の、バルト三国で最も古い歴史を持つ工科大学だ。同校は工学、社会科学、人文科学をはじめとする9つの学部で構成され、1万5000人以上の学生を抱えている。先進的な研究に取り組み革新的な技術の実用化を目指すことに重点を置いている。
IS-Wirelessは、RANのオープン化を目指す業界団体O-RAN ALLIANCEに参画する通信事業者の一社だ。O-RAN ALLIANCEには、ドイツの通信事業者Deutsche Telekomが運営する技術インキュベーション施設(新興企業の事業拡大やサービス導入を支援する施設)hubraumや、デジタル技術とイノベーションを促進する英国の非営利団体Digital Catapultなど、世界中の組織が携わっている。
IS-WirelessのCEOであるスワボミル・ピエトジク氏は、「リガ工科大学がOpen RANのプライベート5Gを選んだことは、モバイルネットワーク分野における世界的なトレンドに合致している」と語る。同社によると、東欧ではプライベート5GとOpen RANへの関心が高まっており、ポーランドやドイツ、英国で導入が進んでいる。
プライベート5Gの市場規模は2032年までに1296億ドルに成長し、2022年の市場規模は26億ドルに及ぶ見込みだとIS-Wirelessは推定している。ピエトジク氏は「プライベート5Gの導入によって、リガ工科大学は大規模な教育と研究の機会を獲得できる」と期待を寄せる。
リガ工科大学は学内にモバイルネットワーク研究室を新設し、以下の研究に取り組む。この研究室は企業との共同研究をさらに拡大する予定だという。
- Open RANアーキテクチャの性能評価
- RANインテリジェントコントローラー(RAN機能の制御と最適化を担うソフトウェアコンポーネント)のための機械学習ソフトウェアの研究
- プライベート5Gのテストベッド(試験用環境)の構築
ピエトジク氏は「モバイルネットワーク研究室の設立は、大学周辺地域にかけがえのないノウハウと経験を生み出す第一歩になる」と語る。同校がパートナー企業と共に研究開発に取り組むことで、「産業界で役立つさまざまなアプリケーションのために、より先進的なプライベート5Gを展開できるようになる」と同氏は展望する。
リガ工科大学でイノベーション担当副学長を務めるリーネ・ブリーデ氏は、モバイルネットワーク研究室の発足を「大学と企業の協力関係が結実した成功の瞬間」だと表す。「私たちは2022年、世界で起きている変化を理解するためにIS-Wirelessと出会った。私たちの取り組みは、学術機関と産業界が一体となって能力を高め、変革を起こすための素晴らしい事例だ」(ブリーデ氏)
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