「仮想GPU」を使い始めるには? インフラや準備の流れは?:パススルーと仮想GPU【第3回】
仮想マシンでGPU(グラフィックス処理ユニット)のリソースを使う場合は、当然ながらそのための下準備が必要になる。GPUのリソースを使う2つの方法を基に、その準備の流れについて説明しよう。
「GPU」(グラフィックス処理ユニット)のリソースを仮想マシン(VM)で使用する方法としては、「仮想GPU」(以下、vGPU)と「パススルーモード」がある。VMでGPUを使用するに当たって必要なのは、まず下準備だ。何が必要なのかを分かりやすくするために、本稿は一連の準備の流れについて、Broadcom傘下のVMwareと、NVIDIAの製品を前提に紹介しよう。
「仮想GPU」を使う下準備 必要なインフラは?
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まず2つの方法について簡単に触れておく。vGPUは複数のVMがGPUのリソースを共有するできるようにする方法。パススルーモードは、VMがGPU全体のリソースの利用と制御ができるようになる方法だ。
これから紹介する一連の手順は、概要を簡単に示すことを目的にしている。各種ソフトウェアのインストールやGPUのセットアップ、vGPUの割り当てなどに関する詳細な手順や設定項目については、NVIDIAとVMware(Broadcom)による情報を確認してほしい。他のGPU製品またはハイパーバイザー製品を使用する場合も、その製品のベンダーが提供する情報に従おう。
VMでvGPUを利用可能にする
VMにvGPUを追加する前に、まずは以下に示す前提条件が整っていることを確認しよう。
- 必要なサーバを設置する
- サーバはvGPUを運用するための適切なハイパーバイザーや、ハイパーバイザーの管理ツール、少なくとも1つのGPUチップ(チップは演算処理を担うコアを搭載する集積回路)を搭載するグラフィックボード(ビデオカード)を備えている必要がある。
- ハイパーバイザー用のvGPU管理ツールをインストールする
- ハイパーバイザーはCloud Software Group(旧Citrix Systems)の「XenServer」や、VMware(Broadcom)の「VMware ESXi」(以下、ESXi)などが対象になる。
- 仮想デスクトップを使う場合は、専用のソフトウェアをインストールする
- vGPUがVDI(仮想デスクトップインフラ)を利用できるものである場合は、「Citrix Virtual Desktops」(旧XenDesktop)や「VMware Horizon」といった仮想デスクトップ用ソフトウェアをインストールする。
- ゲストOSをインストールする
- vGPUのリソースを使用する仮想マシン(VM)を作成し、そのVMにゲストOSをインストールする。
これらの前提条件が整ったら、vGPUのインストールと設定を進める。ここでは、仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」(以下、vSphere)でNVIDIAのvGPUを設定する一般的な手順を紹介する。
- ESXiのホストを停止する
- VM用にGPUのリソースを割り当てるモジュール「vGPU Manager」をインストールする
- 管理ツール「vCenter Server」にログインして必要な設定を施す
- vSphereのグラフィックスタイプを「直接共有」にする
- 「グラフィックデバイス」のタブで、vGPUを構成するGPUを確認し、「共有」になっているものがあれば「直接共有」に変更する
- ESXiホストを再起動する
vGPUを実行するVMではWebコンソールを使用できなくなるため、vGPUを設定する前に、VMware Horizonや仮想ネットワーク コンピュータ(VNC)クライアントなど、VMに接続する手段を別途用意する必要がある。
VMでNVIDIAのvGPUを構成する流れは以下の通りだ。
- 目的のVMを停止する
- vCenterのWebインタフェースを開く
- 目的のVMを右クリックして「設定の編集」を選択する
- 仮想ハードウェアのタブを選択し、新しいデバイスとして共有するPCIデバイスを選択して追加する
- 「NVIDIA GRID vGPU」が表示されているはずだ。
- GPUプロファイルのドロップダウンメニューで構成するvGPUのタイプを選択し、「OK」をクリックする
- vCenterのWebインタフェースを使用して、vGPUを使用するVMにゲストメモリが割り当てられていることを確認する
- 全ての変更を確定したら、設定したVMを起動する
- VMware Horizonまたは仮想ネットワーク コンピュータ(VNC)クライアントを使ってVMに接続する
最後に、vGPUグラフィックスドライバなどのグラフィックスドライバをゲストOSにインストールし、VMがGPUを使用できるようにする。
パススルーモードを有効にしてVMに割り当てる
vSphereでは、GPUに直接アクセスする仕組みとして「vDGA」(Virtual Dedicated Graphics AccelerationVirtual Dedicated Graphics Acceleration)が使用できる。これを使い、VMがGPUを専有して使うパススルーモードが可能になる。そのための基本的な準備の流れは以下の通りだ。
- VMを停止する
- vCenterのWebインタフェースを開く
- ESXiホストを選択して「設定」を選択する
- ハードウェアのメニューで「PCIデバイス」を選んで編集を選択する
- NVIDIAのGPUを選択して「OK」をクリックする
- ESXiホストを再起動する
- vCenterのWebインタフェースに戻り、目的のVMを右クリックして「設定の編集」を選択する
- 新しいデバイスのメニューから「PCIデバイス」を選んで「追加」を選択する
- 新しいデバイスのドロップダウンリストからGPUを選択する
- 全てのメモリを予約することを選択して、「OK」をクリックする
- VMを再起動する
パススルーモードでGPUをVMに追加したら、VMのゲストOSに、NVIDIAのvGPUグラフィックスドライバなどのグラフィックスドライバをインストールする。
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