「生成AIでアプリ開発」がもたらす、効率化どころじゃない“根本的な変化”とは:LLMで変わる開発【前編】
大規模言語モデル(LLM)などのAI技術を用いたアプリケーション開発は、従来の開発と何が違うのか。考慮すべきポイントと併せて解説する。
OpenAIのAI(人工知能)チャットbot「ChatGPT」や、MicrosoftのAIアシスタント「Microsoft Copilot」をはじめとする各種AIツールの登場により、テキストや画像などを自動生成するAI技術「生成AI」(ジェネレーティブAI)や、その基となる大規模言語モデル(LLM)の可能性が広く認知されることとなった。
今やLLMの用途は日常業務の補助にとどまらず、革新的な製品やサービスの開発と、ビジネスの差別化にも役立てられている。専門家によると、AI技術を用いた開発には、従来のアプリケーション開発とは根本的に異なる点があるという。具体的に何が違うのか。
「AIによる開発」と従来の開発の“根本的な違い”は?
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従来の開発では、既知のシステムやAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を使用する際、入力内容とそれに対応する結果の文書化が可能だった。「常にとは限らないが、システムが出力する内容は決定的で予測可能だった」。こう話すのは、ソフトウェアベンダーTricentisでAI担当のバイスプレジデントを務めるデビッド・コルウェル氏だ。
その仕組みを、生成AIは根本から変えた。LLMは膨大なデータで訓練されるが、だからといって出力する内容が正しいとは限らない。「これはバグではなく、むしろ生成AIの本質的な特性だ。将来的にLLMが改善されることを願うしかない」とコルウェル氏は話す。
ただしコルウェル氏は、生成AIによる出力内容が常に正しいわけではない点を問題視すべきではないと捉えている。その代わりに、AI技術を理解することに時間をかけるべき、いうのが同氏の助言だ。
「AI開発」におけるツールの有効性
LLMの導入に当たってはフレームワーク(プログラム開発に必要な機能の集合体)を活用できる。例えば、開発者はAI開発向けのオープンソースフレームワーク「LangChain」を使うことで、迅速にプロトタイピング(試作品を用いた事前検証)や実験を実施できるようになる。
ローコード(最低限のソースコードを記述)開発ツールの活用も有効だ。ローコード開発ツールは、機械学習の専門知識が不足しているユーザーでも使いやすいインタフェースになっていることが一般的だ。
ただしローコード開発ツールを使う際の注意点もある。「ローコード開発ツールによってLLMを搭載したアプリケーション開発は容易になるが、専門的なタスクを組んだり複雑なLLMを扱ったりする際には限界がある」。モバイルデバイスベンダーZebra TechnologiesでAI研究グローバルディレクターを務めるアンドレア・ミラビレ氏はそう指摘する。
LLMの性能を強化するためには、ハイパーパラメーター(機械学習モデルのトレーニングに使う変数)の調整、学習データの管理の実施が欠かせない。開発者がLLMの挙動を適切に判断するには、機械学習アルゴリズムを正しく理解する必要がある。
中編は、生成AIの導入に乗り出す前に確認すべきポイントを解説する。
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