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「パスワード」と「生体認証」の“安全性”が全く違うのはなぜかユーザー認証のリスクと安全対策【後編】

顔や指紋といった身体的特徴を使用する「生体認証」によって認証が進化している。パスワードやMFAではなく、生体認証を使うことでどのような利点が得られるのかをまとめた。

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 IDおよびアクセス管理(IAM)の新たな手法として、セキュリティと利便性の強化の両立を狙った「生体認証」(バイオメトリクス)技術がある。パスワードやMFA(多要素認証)ではなく、生体認証を使うことで、セキュリティの観点でどのような利点が得られるのか。認証の安全性を強化するに当たって知っておくべき生体認証の特徴をまとめた。

「パスワード」と「生体認証」のセキュリティの違い

 生体認証の優れた点は、唯一無二である“個人の身体的特徴”を使うため、他人と共有できないことだ。例えば指紋認証なら、本人であることがほぼ確実に保証される。指紋の例が示すように、生体認証の情報を複製するのは極めて困難だ。こうした生体認証の特徴を生かすことで、認証のセキュリティをより強固にできる。

 もう一つの利点は、ユーザーにとっての利便性だ。生体認証の技術を使った認証では、複雑なパスワードを考えたり覚えたりする必要がない。パスワードはユーザーがメモすることがあるので、流出する恐れがある。生体認証なら、認証のための情報が流出するリスクがほとんどない。

 IDカードや非接触型カードを使う場合は盗難や偽造のリスクが問題になる。生体認証ならこの問題も解消できる。非常に重要なデータへのアクセスを伴う認証であれば、IDカードの利用と、網膜スキャンなどによる生体認証を組み合わせる方法も考えられる。

 IAMツールにおいては、多要素認証(MFA)の採用が広がりつつある。MFAはユーザーにとっての手間がかかる点が課題だ。指紋認証や顔認識なら、本人確認の手間を省きながら、認証のセキュリティを強固にすることができる。これは特に、業務アプリケーションで1日に何度もアクセスするシステムの場合に有効だと考えられる。

 生体認証では、スマートフォンやネットワーク接続が必ずしも必要ではない。スマートフォンの故障やネットワーク障害によってシステムにアクセスできないといったトラブルを避けることができる。こうした利点があることから、生体認証の採用についてはユーザーの理解を得やすいだろう。生体認証の導入と共に人工知能(AI)技術を活用すれば、システム監視やアラート対応といった管理側の業務負荷を減らせる可能性がある。

生体認証の注意点とは

 生体認証を使う場合の注意点は、ユーザーのプライバシーの問題が関わってくることだ。自分の指紋や顔などが認証に使われることに抵抗感を覚えたり、監視に使われることを懸念したりする人もいると考えられる。

 このような問題を和らげるために、生体認証のデータの徹底的な管理が欠かせない。組織は生体認証のデータについて明確な利用ポリシーを決めた上で、そのデータにアクセスできる管理者を限定する必要がある。従業員が退職したら、関連する生体認証のデータを迅速に削除することが求められる。生体認証を使った認証システムを安定的に運用するためには、データがどのように使われ、保護されているのかを、従業員に丁寧に伝えることが大切だ。

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