「Amazon S3」は“2006年の誕生”からどう進化した? AI時代の新たな動向:AWSと共に生まれたストレージ「S3」【前編】
AWSの「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)は2006年にサービスを提供開始して以来、進化を続けている。昨今は機械学習などAI関連のアップデートが目立つ。どのような点が進化したのか。
クラウドベンダーAmazon Web Services(AWS)がクラウドストレージ「Amazon Simple Storage Service」(Amazon S3)を2006年に提供開始してから18年が経過した。その間、同社は処理速度の向上やサービス追加など、S3のアップデートを繰り返してきた。
近年では特に、AWSは機械学習など人工知能(AI)技術に関する開発のための機能やサービスをAmazon S3に追加している。その主要な進化を確認しよう。
AI時代の進化とは? 「Amazon S3」の最新動向
併せて読みたいお薦め記事
Amazon S3の賢い使い方
- Amazon S3やSageMakerで作るドローンサービス AWSを使う理由とは?
- 「Amazon S3」を安く使う賢い方法 「S3 Intelligent-Tiering」「Amazon S3 Storage Lens」を駆使
AWSは近年、機械学習などAI技術の開発者向けに、ファイルストレージサービスの「Amazon Elastic File Service」(Amazon EFS)の処理速度を改善した他、以下の機能をAmazon S3に追加した。
- ディープラーニング用のフレームワーク「PyTorch」の機械学習ライブラリ「PyTorch Lightning」のチェックポイントを直接S3に保存する機能
- チェックポイントは、特定の時間におけるモデルの状態を保存したデータ
- クラウドインフラと同等のシステムをオンプレミスに持ち込むサービス「AWS Outposts」で、認証データをキャッシュする機能
- 認証のたびにクラウドサービスと通信する必要がなくなり、ネットワーク使用量の削減が可能
- S3をマウント(OSに認識させ利用可能な状態にすること)させるためのドライバである「Mountpoint for Amazon S3 Container Storage Interface(CSI)」が、AWSが開発したLinuxベースのコンテナ用OS「Bottlerocket」をサポート
米TechTargetの調査部門Enterprise Strategy Group(ESG)のアナリストであるサイモン・ロビンソン氏はS3について次のように語る。「S3は企業のクラウドサービスとデータセンターの両方で、広く採用されている標準的なオブジェクトストレージだ。今後、AWSはAIの需要に応えるためにS3の機能をさらに拡張する」
AWS Outpostsでオブジェクトストレージを利用する「Amazon S3 on Outposts」は、認証データをローカルにキャッシュ可能だ。これにより、リクエストごとにクラウドサービスを経由して認証する必要がなくなる。
2023年11月にAWSが提供を開始したPyTorch用S3コネクターは、PyTorchを使用するジョブ(処理の単位)にS3を直接接続する。2024年3月の年次イベント「AWS Pi Day 2024」でAWSが発表した新機能を使えば、PyTorch Lightningを使用し、進行中のジョブを中断することなく機械学習モデルのチェックポイントを保存できるようになった。
S3マウント用のCSIドライバ「Mountpoint for Amazon S3 CSI」により、コンテナサービス「Amazon Elastic Kubernetes Service」(EKS)のコンテナから、S3のデータにアクセスできるようになった。Amazon EKSはコンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」のマネージドサービスだ。
「Amazon EFSの処理速度向上は、AWSが企業向けファイルストレージシステムに本格的に取り組んでいる証拠だ」とロビンソン氏は分析する。
次回は、S3がストレージ市場にもたらした変革について解説する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.