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「Copilot+ PC」が“次期Windows PC”として人気になるとは言い切れない訳Microsoftの“AI PC”ブランドに待ち受ける現実【後編】

Microsoftは2024年5月、AIワークロードの処理能力を強化した新PCブランド「Copilot+ PC」を発表した。Copilot+ PCは普及するのか。専門家が不可欠だと考えるものとは。

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 Microsoftは2024年5月、同社のAI(人工知能)技術戦略に関する新たな一手を披露した。明らかになったのは、AIワークロード(AI技術関連の処理やタスク)の処理能力を向上させるNPU(Neural network Processing Unit)搭載のPCブランド「Copilot+ PC」だ。同年6月には主要PCメーカーがCopilot+ PCを発売した。

 企業はCopilot+ PCに関心を向けており、その滑り出しは一見すると順調だ。だが専門家は、Copilot+ PCが成功するには“ある要素”が足りていないと指摘する。普及には何が必要なのか。

「Copilot+ PC」が普及するとは言い切れない理由

 Copilot PC+には、搭載するSoC(統合型プロセッサ)に要件がある。2024年6月時点でのCopilot+ PCは、Qualcomm製の「Arm」アーキテクチャ採用CPU「Snapdragon X Elite」を搭載している。

 企業にとって重要なポイントは、業務で使用するアプリケーションが「Arm」アーキテクチャ採用のCPUを搭載したCopilot+ PCで正常に動作するかどうかだ。MicrosoftはOS「Windows」をアップデートし、SoC(統合型プロセッサ)「Snapdragon」を構成するCPUとGPU、NPU(ニューラルプロセッシングユニット)に最適化してきた。一方で過去にはWindowsのアップデートに伴って、プリンタやネットワークアダプター、ディスプレイ、ビデオカードなどのハードウェアとOSを接続するドライバに互換性の問題が発生したことがある。

 命令セットとして「x86」を採用するCPU向けのアプリケーションを、Armアーキテクチャ採用のCPUで実行させるエミュレーションソフトウェアで、業務用アプリケーションが正しく動作するかどうかも同様に重要なポイントになる。

 「ほとんどの企業は、デバイスが搭載するOSや半導体よりも、自社が使用しているアプリケーションを懸念している」。コンサルティング会社J. Gold Associatesで主席アナリストを務めるジャック・ゴールド氏はそう述べる。「Armアーキテクチャ採用のCPUで稼働する『Windows 11』が、企業に浸透しているアプリケーションに不具合を発生させないこと」を、Microsoftは確実に証明しなければならないとゴールド氏は考える。

 市場調査会社TECHnalysis Researchのプレジデントであるボブ・オドネル氏も同じ意見を示す。企業はArmアーキテクチャ採用CPUを搭載したPCでWindows 11を稼働させ、そこで自社の業務用アプリケーションが動作するかどうかを徹底的にテストすることになるとみる。「初期段階では非常に良好だとの報告があるが、アプリケーションが正常に動作するかどうかを企業が重視するようになれば、好評以外の声が上がる可能性がある」と指摘する。

 企業が2020年から2021年にかけての新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下で調達したPCは、2024年のいま、刷新の時期に差し掛かっている。Armアーキテクチャ採用CPUを搭載したCopilot+ PCを数台調達して、動作テストをする企業が出てくる可能性をアナリストは示唆する。

 調達に関して企業は保守的になりがちだ。なじみのあるIntelがCopilot+ PC向けのプロセッサを発表すれば、そうしたプロセッサを搭載するPCの調達が大幅に進む可能性がある。Intel製プロセッサを搭載したCopilot+ PCの成功は、価格と、IntelがどれだけQualcommに対抗できるのかに懸かっている。「価格に対する性能が問われるだろう。もしQualcommの価格設定が適切であれば、Intelにとって強力な競争相手になる」とゴールド氏は話す。

 Copilot+ PCが搭載するAI技術活用機能としては、以下がある。

  • Recall
    • エンドユーザーがPCで閲覧した文書や動画、Webサイトなどを記憶
  • Cocreator
    • 画像を生成、編集
  • Live Captions
    • 40種以上の言語の音声を英語に翻訳

 「これらの機能は有用だが、企業はそれ以上のものを求める」とゴールド氏は指摘する。「アプリケーションベンダーが何を提供するかに懸かっている。エンドユーザーはWindowsだけではなく、その中で稼働するアプリケーションに相当な時間を費やすからだ」(同氏)

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