NVIDIAに忍び寄る「GPU競争激化」だけではない“AI半導体まさかの死角”:GPUベンダーNVIDIAの成長要因【後編】
生成AIや画像処理技術の進化に合わせて、NVIDIAの株価は上昇した。しかし同社の成長がいつまでも続くとは限らない。同社の成長を妨げる要因とは。
GPU(グラフィックス処理装置)などの半導体製品を手掛けるNVIDIAは、2024年6月18日(現地時間、以下同じ)に時価総額が3兆3350億ドルに達し、その時点ではMicrosoftやAppleといったIT企業を抑えて、時価総額で世界最大の企業となった。
生成AIを動かすさまざまなデータセンターで、NVIDIAのGPUが使われている。しかし競合ベンダーとの競争激化も予測される中で、NVIDIAの今後は必ずしも安泰ではない。NVIDIAの将来に影響を及ぼす可能性がある“死角”がある。
NVIDIAの成長を妨げる“AI半導体の死角”とは
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生成AI市場は今後も成長を続けるとみられるが、各国で生成AIの開発や利用に関する法規制が生まれている。これらの法規制はNVIDIAのGPUやAI技術向け製品群に影響を及ぼしかねない。米国が実施している中国への半導体の輸出規制も、NVIDIAの成長に影響を与えている。なぜなら中国はNVIDIAの主要な輸出先の一つだからだ。
競合半導体ベンダーの成長が続いていることも、NVIDIAの成長を妨げる要因となっている。AMD(Advanced Micro Devices)のGPU「AMD Instinct MI200」シリーズはその一例だ。Intelのデータセンター向けプロセッサ「Intel Xeon」シリーズの第5世代もある。ユーザー企業が1社への依存をよしとせず、他のベンダーの開拓に乗り出せば、NVIDIAの成長に打撃を与える可能性がある。
NVIDIAの製品のニーズは特にAI市場で拡大しているため、生成AI市場が成長すれば、同社の売上高もその分伸びるだろう。NVIDIAの競合ベンダーがどれだけ市場のシェアを奪うかは未知数だ。NVIDIAは「NVIDIA H200 Tensor Core GPU」を2023年11月に発表するなど、GPUの処理性能を向上させ続けている。
Amazon Web Services(AWS)やGoogle、Microsoftなどのクラウドベンダーは、自社で独自のAIプロセッサを開発している。NVIDIAのGPUと連携して動作するそうしたAIプロセッサも、NVIDIAのGPUのニーズを支える存在になる可能性がある。
AI市場は急速な変化のさなかにある。ユーザー企業の生成AIの需要は高まっており、そのことが新たなAIビジネスの誕生につながっている。セキュリティやコンプライアンス(法令順守)といった分野も、生成AI市場と連動して変化する。これらの要素が、GPU市場の成長につながっている。
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