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「量子コンピュータ」による“暗号解読”は必然? IT業界が動き出す“暗号技術が突破される日”がすぐそこに

量子コンピュータが実用化する日に向けて、Linux Foundationは暗号技術の安全性確保に向けたアライアンスを立ち上げた。量子コンピュータがもたらすセキュリティリスクとは。

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Linux | 暗号化 | セキュリティ


 業界団体のLinux Foundationは2024年2月、GoogleやIBM、Amazon Web Services(AWS)などと協力し、量子コンピュータが実用化するときに備えて暗号技術の安全性確保を目指す協力関係「Post-Quantum Cryptography Alliance」(PQCA)を立ち上げた。この動きの背景にあるのは、量子コンピュータがもたらすセキュリティリスクへの危機感だ。

量子コンピュータがもたらすセキュリティリスクと、PQCAの狙い

 量子コンピューティングとは、量子力学を用いて複雑なデータ処理を実施する技術だ。量子コンピュータが実用化すれば、暗号化されたデータが解読される恐れがある。

 PQCAではセキュリティの研究者や開発者が集まり、量子コンピュータを使ってもデータの解読ができない暗号技術の開発に取り組む。量子コンピュータが実用化すると、量子コンピュータによる暗号解読を悪用したさまざまな攻撃手法が出てくると想定される。「新しい暗号技術の必要性が著しく高まっている」とLinux Foundationは説明する。

 PQCAは活動の一環として、2014年にカナダのウォータールー大学(University of Waterloo)が設立したプロジェクト「Open Quantum Safe」(OQS)を支援している。OQSはオープンソースソフトウェア(OSS)を使い、量子コンピューティングに強い暗号化の開発を目指している。

 OSSの安全利用を目指す団体Open Source Security Foundation(OpenSSF)のゼネラルマネジャー、オムカール・アラサラトナム氏は、量子コンピュータによる脅威は「現実のものだ」と述べる。アラサラトナム氏によると、早ければ2030年には既存の暗号技術が突破されてしまう可能性がある。

 そうした中、アラサラトナム氏はPQCAの立ち上げを「非常に重要なもの」として評価している。PQCAを通じて新しい暗号化技術に必要なノウハウやツールが共有されるため、新しい暗号技術の標準化に取り組みやすいと同氏はみる。OpenSSFはPQCAと緊密に協力する方針だという。

 ウォータールー大学准教授(暗号学)のダグラス・ステビラ氏はOpenSSFのアラサラトナム氏と同様、量子コンピューティングによるセキュリティリスクを強調する。実用化されれば、現在の暗号技術ではデータを十分に保護できなくなると同氏は言う。ステビラ氏によると、新しい暗号技術の開発と普及に当たり、相当な時間やリソースが必要だ。「PQCAの設立によってその第一歩を踏み出せた」(同氏)

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