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学校で何が起きている? 教育現場における「IT活用の新常識」とはEdTechの最前線【前編】

EdTech企業の調査によると、ドイツやオーストリアなどのDACHの教育現場でテクノロジーの活用に進展が見られる。変化が起きている背景には何があるのか。

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人工知能 | 教育IT


 教育現場でのテクノロジー活用推進の取り組みが、ドイツ、オーストリア、スイスが構成する欧州のドイツ語圏DACHで進んでいる。教育技術(EdTech)企業GoStudentが2024年3月に公開した年次レポート「Future of Education Report 2024」によると、テクノロジーに対する子どもや保護者の考え方には、2023年から2024年にかけて大きな変化があった。その背景には何があるのか。

“激変”した教育現場の考え方とは

 Future of Education Report 2024は、GoStudentの委託でEdelman Data & Intelligence(広報持ち株会社Daniel J. Edelman Holdings傘下の調査組織)が2023年10〜11月にオンラインで実施した調査に基づく。回答者はオーストリア、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、英国の保護者5581人と、その10〜16歳の子ども5581人だ。

 この調査では、「新しいテクノロジーの世界で生きる自信があるかどうか」を子どもに質問した。2024年版のレポートではドイツとオーストリアの両国で73%が「自信がある」と答えた。2023年版のレポートで同様の質問をした際、「自信がある」と答えたのはドイツの回答者の48%、オーストリアの回答者の51%だったため、2024年版では大幅に増加したことになる。

 「人工知能(AI)は教育に高い効果を発揮するツールだと思うか」という質問では、オーストリアの保護者の66%、ドイツの保護者の65%、英国の保護者の53%、フランスの保護者の45%が同意した。

 こうした調査結果から、DACHの子どもが革新的なテクノロジーに親しみつつあることが分かる。保護者からは、教育現場でのテクノロジーの活用を求める声が出ている。GoStudentの共同創業者でありCEOのフェリックス・オズワルドは、「DACHの保護者はAI技術に関心を示し、VR(仮想現実)やメタバースのようなテクノロジーの利用にも前向きだ」と話す。

テクノロジーに対する見方に変化

 世界中でGoStudentの事業は成長している。「2015年の創業以来、教育分野におけるデジタル技術の導入について、保護者や教師、子ども、政府に説明することに時間を費やしてきた」とオズワルドは話す。GoStudentはただテクノロジーを売っているわけではなく、場合によっては文化や既存のやり方を変えてもらうことになるため、「説得は簡単ではない」という。

 例えばドイツ政府は、一定の収入額以下の家庭に個別指導のための補助金を支給する。ただしそうした個別指導は概して対面で実施されており、関連する事務処理もオンラインでは完結できないことが大半だという。固定してしまった仕組みやルールを変えるのは簡単ではないものの、教育のテクノロジー活用を推進するために、オズワルド氏は「テクノロジーを求めている」と子どもや保護者が声を挙げることの必要性を訴える。

 Future of Education Report 2024は、テクノロジーを求める層の意見が大きくなってきたことを示すものだとオズワルト氏はみている。DACHの子どもや保護者の意見が1年間で明確に変わっただけではなく、国家レベルの意思決定にも変化の兆しも見られるという。

 オズワルト氏は、デジタル技術を活用した教育現場作りに向けた道筋は構築されつつあると指摘する。ドイツが2019年に開始したDigitalpakt Schuleは、教育機関におけるデジタルインフラの迅速な整備や、子どものデジタル技術の利用を推進するプロジェクトだ。「このプログラムの施行が、子どもや保護者がAI技術をはじめとしたデジタルツールを求める理由の一つになっている」(同氏)


 後編は、教育現場におけるデジタル技術の導入を推進する上で、GoStudentが重視しているポイントを紹介する。

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