「Hyper-V」はどう変わる? あの機能で“VMware代替”もより現実的に:Microsoftのハイパーバイザー新機能【前編】
VMwareの買収による混乱が続く中、Microsoftは仮想化分野における新たな動きを見せている。Microsoftが提供するハイパーバイザー「Hyper-V」の新機能とは。仮想化の市場でシェアを奪えるのか。
半導体ベンダーBroadcomが仮想化技術ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品に加わった変更が一部のユーザー企業の不満を買っている。そうした中、同じく仮想化ソフトウェアを提供するMicrosoftは、新サーバOS「Windows Server 2025」でハイパーバイザー「Hyper-V」の大型アップデートを計画している。このアップデートは、Microsoftが仮想化市場でシェアを奪う“切り札”になる可能性がある。Hyper-Vはどう変わるのか。
Hyper-Vはどう進化する?
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VMware買収で動く仮想化市場
VMwareは仮想化市場において確固たる地位を築いた。ただしBroadcomによる買収後、VMware製品はそのユーザー企業に不安と混乱をもたらしている。VMware製品の永続ライセンスが廃止されたり、ハイパーバイザー「VMware ESXi」の無料版の提供が終了したりしたからだ。
この状況は他の仮想化ベンダーにとってはチャンスだ。特に大きなチャンスを迎えたのがMicrosoftだ。同社はWindows Server 2025のプレビュー版を2024年5月に公開し、正式版の公開に向けて準備を進めている。
Windows Server 2025において、MicrosoftはWindows Serverの機能の一つであるHyper-Vにも、新機能の追加や機能更新を計画している。その目的はスケーラビリティー(拡張性)の向上だ。人工知能(AI)関連の処理やビッグデータ処理といった、コンピューティングリソースを必要とするタスクを実行する企業にとって、こうしたHyper-Vの強化は魅力的に見える可能性がある。その結果、VMware製品からMicrosoft製品に移行する企業が出る可能性もある。そのようなタスクを実行する企業は、今のところ大企業が中心だが、時間がたつにつれて小規模企業もメリットを享受できるようになると見込まれる。
Windows Server 2025のHyper-Vの主な特徴を以下に示す。
- 仮想CPU(vCPU)数の増加
- 1つの仮想マシン(VM)で使用できるvCPUの数が、最大2048個になる。
- 「Windows Server 2022」では最大1024個だったところから、最大2048個に増加。
- メモリ容量の増加
- 「第2世代VM」で、最大240TBのメモリを利用できるようになる。
- 第2世代VMは、Hyper-Vが提供する新しいタイプのVM。
- ストレージの拡張
- 1つのVMごとに、最大4個の仮想SCSI(Small Computer Serial Interface)コントローラーを保有できるようになる。その結果、1つのVMごとに最大256個の仮想SCSIディスクを接続できるようになる。
- SCSIは、コンピュータとSSDやHDDなどの周辺機器を接続するためのインタフェース規格。
- 「VHDX」形式で最大64TBの仮想ディスクを利用できるようになる。
- 1つのVMごとに、最大4個の仮想SCSI(Small Computer Serial Interface)コントローラーを保有できるようになる。その結果、1つのVMごとに最大256個の仮想SCSIディスクを接続できるようになる。
- 接続性の強化
- 1つのVMごとに最大68個の仮想ネットワークアダプター(NIC:ネットワークインタフェースカード)を接続できるようになる。
- ホストマシンの処理能力向上
- Hyper-Vのホストマシン(Hyper-Vを稼働させるサーバ)が、最大4PBのメモリを使用できるようになる。
- クラスタ機能の強化
- 1つのフェイルオーバークラスタ(複数のサーバを束ねて障害時に切り替える構成)で、最大64個のノード(サーバ)と、最大8000個のVMを管理できるようになる。
次回は、Hyper-Vの新機能を紹介する。
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