「生成AI」後発組でも効果は十分 ROIから見る“驚きの導入効果”とは:もはや企業の必須ツール?
「ROIが見通せない」という理由で生成AIの活用に後れを取っていた企業でも、その効果を享受できている実態が判明した。生成AIのROIはどの程度なのか。
テキストや画像などを自動生成するAI(人工知能)技術「生成AI」を業務に活用する動きが広がりつつある。一方で、予算の獲得や経営層の理解を得るのに時間がかかるために、生成AIツールを活用できていない企業がある。
調査会社IDCが2024年11月に公開した調査レポートは、そうした企業にとって朗報になる可能性がある。同レポートは、生成AIの活用に積極的に取り組む企業と、活用に時間がかかっている企業において、AI投資に対するROI(投資対効果)を明らかにするものだ。生成AIの活用に後れを取る企業にも希望を与える、生成AI活用の実態とは。
出遅れてもこれだけ役立つ生成AI
IDCは回答結果を踏まえて、生成AIの活用に関する習熟度に基づいて回答者を3つのカテゴリーに分類した。
- リーダー
- 企業全体のAI戦略をビジネス目標と一致させ、革新的なビジネスモデルを構築して継続的に事業価値を生み出している企業
- ラガード
- AI技術への投資や活用に後れを取っている企業
- ニュートラル
- リーダーとラガードの間に位置する程度にAI技術への投資や活用を実施している企業
調査では、回答者の43%が「生成AIを使って分析やタスクの完了にかかる時間を短縮できている」と答えた。回答者は生成AIへの投資1ドルに対して、平均370%のROIを達成したという。
レポートによると、リーダーは平均1030%のROIを実現しており、これはラガードよりも高い数字だ。生成AIを導入するまでにかかった期間についても、「3カ月以内に導入した」と答えたのはリーダーの29%、ラガードの6%であり、導入スピードに顕著な差が見られる。
ただしラガードが生成AIを活用できていないわけではない。ラガードも、生成AIに関する投資において290%のROIを実現している。
調査レポートは、企業が独自のAIツールを開発する動きにも触れている。回答者の43%が「Microsoft Copilot」といった既存のAIツールを使用していると答えた。一方、特定のビジネスニーズや要件に合わせて一からAIツールを開発していると答えた回答者は19%、今後2年以内に特定のビジネスニーズや要件に合わせて一からAIツールを開発すると答えた回答者は36%だった。
調査レポートは、調査会社IDCがMicrosoftの委託で実施し、世界各地のビジネスリーダーと、AI技術に関する意思決定権を持つ労働者約4000人が回答した。
生成AIで顧客の業務時間を4分の3に減らしたMoody's
調査レポートは、生成AIを使って業務時間を削減した債券信用格付け会社Moody's Investors Service(以下、Moody's)の事例を紹介している。同社の最高製品責任者(CPO:Chief Product Officer)ニック・リード氏によると、Moody'sはAIモデルが利用可能なMicrosoftのクラウドサービス「Azure OpenAI Service」を活用して、市場データの参照や分析を容易にする「データの民主化」を推進している。
そうした取り組みの一例が、Azure OpenAI Serviceを活用したデータ分析ツール「Moody's Research Assistant」だ。Moody's Research Assistantは生成AIを活用して信用調査データや分析結果から洞察を生成できるようにすることで、金融アナリストの業務時間を最大25%削減しているという。
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