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英国「企業デジタルID」構想に“熱い視線”が注がれる理由年間約6億ポンドの利益?

英国の団体CFITが企業向けのデジタルIDの構想を進めている。取り組みには、大手銀行を含む約70の団体が協力し、金融業界は期待を寄せている。その理由とは。

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 英国の金融・イノベーション・技術センター(CFIT:The Centre for Finance,Innovation and Technology)は、企業向けのデジタルID導入の構想を進めている。同団体の試算によると、デジタルIDの導入は、英国経済に年間約6億ポンドの利益をもたらすという。金融業界の関係者が期待する理由とは。

金融業界が“熱い視線”を注ぐ理由

 CFITが構想する企業向けデジタルIDは、企業に関する情報を信頼できる場所に集約するものだ。同団体は、企業の資金調達を容易にし、コンプライアンス確保にかかるコストを抑えられると見込む。CFITは、大手銀行を含む約70の団体と協力し、企業向けデジタルIDに関するレポート「Fighting Economic Crime Through Enhanced Verification」を発表した。

 CFITとパートナー企業の連合は、2025年春に企業向けデジタルIDの概要を発表する計画だ。英国の財務大臣レイチェル・リーブス氏は、政策立案にあたって「CFITの取り組みを考慮する」と述べた。

 企業連合は、以下の金融機関で構成されている。

  • Lloyds Bank
  • NatWest Group
  • Barclays
  • Santander UK
  • HSBC Holdings

 CFITは、企業向けデジタルIDの導入により「資金調達と日常業務の遂行が迅速化するだけではなく、金融犯罪に対する脆弱(ぜいじゃく)性が低減する」と説明する。「業界横断の取り組み」によって金融犯罪の抑止につなげる考えだ。

 NatWest Groupのファレ・マクミラン氏(金融犯罪リスク管理責任者)は、「業界横断の取り組みは、消費者や企業、経済全体を守る上で不可欠だ。CFIDが提案するデジタルIDは、金融システムと顧客を保護しながら、英国の経済成長を支える技術だ」と期待を寄せる。

 デジタルIDは、銀行とその顧客企業にもメリットがある。銀行員が手動で実施している業務を、企業向けデジタルIDを活用して効率化できる。

 Lloyds Bankのエリン・コーフィールド氏(ビジネス・アンド・コマーシャルバンキングCEO)は次のように述べる。「銀行が本人確認手続き業務をデジタル化すれば、英国の小規模企業が実施しているコンプライアンスチェックは簡便になり、金融犯罪の抑制につながる。企業は容易かつ迅速に口座にアクセスでき、成長に必要な投資の確保がしやすくなる。ひいては英国全体の雇用増につながる」

 CFITの会長を務めるシャーロット・クロスウェル氏は、「金融犯罪は英国の経済安全保障における重大な脅威だ」と述べる。同団体の取り組みを通じて「金融犯罪に対して金融業界をより強固な組織にすることを目指す」と語る。

 チャレンジャーバンク(銀行免許を取得して銀行サービスを提供する企業)Monzo Bankのジョーダン・シュワイド氏(ビジネスバンキング部門ゼネラルマネージャー)は、「企業向けデジタルIDは、企業情報が一箇所に集約されることを意味する。犯罪者が架空の企業を設立することが難しくなり、詐欺被害の抑止になる」と述べた。

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