VMwareユーザーに不穏な未来をもたらす「AT&T対Broadcom」の結末:ライセンス変更を巡って主張が対立
AT&TはVMware製品のサポート契約やライセンスを巡ってBroadcomを訴えた。両社の主張は真っ向から対立した。この裁判は、VMware製品のユーザー企業にどのような影響を与えるのか。
通信事業者AT&Tは仮想化ソフトウェアベンダーVMwareを買収したBroadcomに対して、VMware製品のメンテナンスやアップグレードなどのサポートについて問題があるとして2024年8月29日(現地時間、以下同じ)に訴訟を起こした。両社の主張は真っ向から対立した。この裁判は、VMware製品のユーザー企業にどのような影響を与えるのか。
不穏な未来をもたらす「AT&T対Broadcom」の行方
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AT&Tによれば、同社が購入したVMware製品のメンテナンスやアップグレード、トラブルシューティングなどのサポートサービスは2年間延長できるはずだった。
これに対してBroadcomは、VMware製品のライセンス変更に合意しなければサポートは継続しないと主張。同社がVMwareの製品構成やライセンス体系を変更したことにより、AT&Tとの契約でサポート対象となっていたサービスはもはや存在しないと反論した。AT&Tが契約違反により生じたとする損害の範囲についても、不正確だと主張した。
ニューヨーク州最高裁判所判事はAT&TがBroadcomへの差止請求訴訟を起こした件に関して、判断を先送りした。ニューヨーク州最高裁の判事であるジェニファー・シェクター氏は、AT&Tの弁護団とBroadcomの弁護団に対して30日間の交渉期間を与えた。同氏は両社に、2024年11月22日までに裁判所に文書を提出し、交渉に関する最新情報を伝えるよう命じた。Broadcomには交渉期間中、VMware製品のサポートを提供し続けるように求めた。その後両社は、和解に向けた交渉を進めているとみられる。
AT&Tの弁護団とBroadcomの弁護団が、2024年10月11日に裁判所に提出した訴訟手続きの延期を要請する書類からは、両社の和解交渉で進展があったことが伺えた。だが2024年10月23日には、これらの交渉が暗礁に乗り上げたことが明らかになっていた。
「Broadcomに対するAT&Tの主張は、他のVMwareの顧客が直面している同様の契約問題にも通じるものがある」とコンサルティング企業DragonSlayer Consultingの創業者兼プレジデント、マーク・ステイマー氏は述べる。
仮にAT&Tが勝利すれば、VMware製品の顧客の一部は、Broadcomとの交渉において勢いづく可能性がある。だが、「長期にわたる法廷闘争に耐えるリソースを持つ企業は少ない」ともステイマー氏は指摘する。「大企業なら、AT&Tと同様に訴訟できるだろう。だが大半の企業にとっては、そこまでの後押しにはならない」(同氏)
サポート契約を巡ってすれ違った両社の主張
Broadcom側の弁護士である法律事務所Hueston Henniganのアリソン・プレスマン氏は、2024年10月23日の審問で「サポートが打ち切られた場合にリスクにさらされるVMware環境の範囲について、AT&Tは誇張している」と述べた。
「AT&Tはソフトウェアに不具合が1つあれば、ネットワーク全体が停止すると主張しているが、AT&Tほど高度な技術を持つ企業なら、1つの不具合でネットワークが停止するような事態はあり得ない」とプレスマン氏は主張した。「AT&Tは自社のIT環境で稼働しているVMware製ソフトウェアの詳細に関する監査報告書をBroadcomに提示していない」ともプレスマン氏は指摘する。
Broadcomの弁護団は裁判所に提出した書類の中で、AT&Tの主張は「時計の針を戻す」ようなものだと批判している。同弁護団はAT&Tが、Broadcomが買収する前にのみ存在したVMwareの製品を利用しようとしている、と主張していた。
Broadcomによれば、AT&Tが求めるVMware製品やサービスの一部はもはや存在していない。Broadcomは単にVMwareの旧来の製品やサポートを再編したのではなく、新たな製品パッケージを作った。
こうした主張に対して、シェクター氏は、「BroadcomにはAT&Tが購入したソフトウェアに精通しているVMware出身の従業員もいるはずなのに、サービスを存続できないのはなぜか」と尋ねた。「Broadcomで働く従業員はサポートサービスを提供できないのか。以前とまったく同じ仕事をする技術力がないのか。私には理解しかねる」(シェクター氏)
「AT&TはBroadcomのVMwareサービスを今後も継続的に利用するつもりはない」。AT&T側の弁護士である法律事務所Baker& Hostetlerのジョナサン・プレスメント氏はそう述べた。AT&TはVMwareからの移行を検討中だとプレスメント氏は語ったが、移行のスケジュールは明らかにしなかった。
プレスメント氏は、「AT&Tは、『サービス利用料を年額300万ドルから900万ドルに値上げする』と脅迫とも言える通知をBroadcomから受けた。法的措置はBroadcomを契約条件の交渉に就かせる唯一の手段だった」と話した。
「訴訟による脅威以外に、Broadcomのかたくなな姿勢を軟化させる方法は存在しない。われわれがBroadcomに求めているのは、現在と同様のサポートサービスをこれからも提供することだ」とプレスメント氏は語った。
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