「LLM」をクラウドサービスではなく自社サーバで動かすメリットは?:オンプレミスシステムでLLMを動かす方法【前編】
クラウドサービスのLLMを使うことは手軽な一方、自社のオンプレミスシステムでLLMを運用する選択肢もある。クラウド型LLMにはないメリットとは何か。どのような企業が“オンプレミスLLM”を選択すべきなのか。
企業が大規模言語モデル(LLM)を使う場合、クラウドサービスを利用することが一般的だ。一方でLLMを社内のデータセンターで実行すれば、クラウドサービスを利用する場合のリスクの軽減や、クラウドサービスでは得られないメリットが見込める。
LLMをオンプレミスシステムで実行するメリットは?
企業がクラウドサービスではなく、オンプレミスシステムでLLMを実行する主な理由は、セキュリティとパフォーマンスに対する懸念だ。クラウドサービスのLLMは、機密データを外部システムで保管、処理することになるため、データの保管場所や利用状況の把握が難しくなる。LLMのリクエストはインターネットを通じて送受信されるので、社内システムで処理が完結する場合と比べて応答時間が長くなる可能性がある。
こうした懸念を解消し得るのが、オンプレミスシステムでのLLM運用だ。企業はLLMを直接制御できるようになり、データプライバシーの強化やLLMのパフォーマンス最適化が可能になる。
医療や軍事などの規制が厳しい分野では、オンプレミスシステムでLLMを動かすことが特に有用だ。例えば医療機関は、患者データのプライバシーを保護しつつ、用途に合わせてカスタマイズしたLLMを用いて診断支援をしたり、患者とのコミュニケーションの効率化を図ったりできる。
発生源の近くでデータを処理する「エッジコンピューティング」の考え方も、オンプレミスシステムでのLLM運用と親和性がある。石油掘削施設や製造工場、自動運転車といった、現場で活躍するデバイスから得られるデータを、クラウドサービスを用いずその場で処理すれば、LLMによるリアルタイムの意思決定支援が可能だ。
次回は、オンプレミスシステムでLLMを動かすためのインフラ要件を解説する。
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