環境に優しい「AI半導体」を実現するための施策7選:エコなAIチップ製造への道【後編】
希少資源の枯渇や電子ごみ問題など、AIチップ製造は環境面での課題を抱えている。環境負荷を減らしたAIチップ製造を実現するために必要な取り組みとは。
AI(人工知能)技術のブームを背景に、AI技術に関する演算を実行するための集積回路やその関連部品(AIチップ)に対する需要も加熱している。その中で問題になるのが環境への影響だ。AIチップの製造工程では、大量の資源や電力の消費、希少資源の利用など、複数の観点で環境に負荷を掛けている。環境問題に配慮した、持続可能なAIチップ製造は実現可能なのか。
環境に優しいAIチップ製造を実現するには?
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連載:エコなAIチップ製造への道
ベンダーのAIチップ戦略
課題はあるものの、環境に配慮したAIチップ製造を実現する道筋は存在する。以下に具体的な方法を示す。
1.ロボットによる自動リサイクル技術の開発
AIチップのリサイクルは一般的には手作業であり、その過程で有害化学物質への暴露や人的ミスが発生するリスクがある。ロボットを導入することで、これらのリスクを排除し、材料回収の成功率を向上させられる見込みがある。
2.センサーを通じた部品リサイクルデータの収集
センサーでリサイクルデータを収集、分析し、耐久性の高い部品と故障しやすい部品を特定する。分析結果は、製造工程の改善に役立てることが可能だ。
3.製造工程の脱炭素化
再生可能エネルギーの採用、木材や石炭といった化石燃料からの脱却、水の使用量の削減といった取り組みで、温室効果ガスの排出を抑制できる。
4.代替品への置き換え
レアアース、鉱物、化学物質といった材料について、環境に優しく、供給が安定した代替材料を見つける必要がある。そのためには、研究開発への投資が不可欠だ。
5.半導体分離技術の開発
半導体は供給不足が深刻だ。取り外し可能な半導体パッケージ(チップと周辺パーツをまとめたもの)を開発することで、プロセッサベンダーが半導体をリサイクルしやすくなる。
6.持続可能な方法で材料と代替品を調達する
AIチップに使うレアアースなどの重要資源は、中国をはじめ特定の国に依存している。この依存状態は供給のボトルネックになり得るため、プロセッサベンダーは材料を現地調達できるようにして、持続可能な代替品への切り替えを検討すべきだ。
7.循環型経済の実現
プロセッサベンダーはリサイクルを念頭に置いて、AIチップの設計や製造工程を構築する必要がある。そうすることで、材料の効率的な利用、再利用を前提とした循環型経済が実現する。
AIチップの開発には、慎重なかじ取りが求められる。プロセッサベンダーは限りある資源を守るために、持続可能な方法で材料を調達するとともに、製造から廃棄までの工程において環境に配慮することが重要だ。急速に発展するAIチップ市場に規制が追い付くまで、プロセッサベンダーは持続可能な未来の実現に努めなければならない。
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