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AIモデルの「学習」と「推論」は結局何が違うのか?推論と学習のバランスを考える【前編】

AIモデルの高性能化に欠かせないプロセスが「推論」と「学習」だ。この2つのフェーズを適切に設計・運用するためには、それぞれの役割の違いを理解する必要がある。

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人工知能 | 開発プロセス


 人工知能(AI)チャットbotが質問に答えたり、EC(eコマース:電子商取引)サイトが新商品をお薦めしたりする裏側では、「学習」と「推論」という2つの重要なプロセスが走っている。

 学習と推論は相互に関連するものの、明確に異なる役割を持つ。それぞれの特性を理解することが、AIモデルの精度向上や運用効率化に欠かせない。本稿は両者の違いを分かりやすく説明する。

AIの「推論」と「学習」は結局何が違う?

 学習は、AIモデルの知識を構築するプロセスだ。AIモデルが既存のデータセットを解析し、パターンや関係性を見つけ出す。そこで学習したパターンを、推論フェーズで新しい未知のデータに適用し、予測の生成やコンテンツの生成、意思決定の支援を実施する。

 このように、学習と推論はAIモデルの開発や性能向上において重要な役割を果たす。それぞれに独自のメリットと目的があるため、開発者は学習と推論の目標に応じて慎重にリソースを配分する必要がある。

 学習は実験的なプロセスだ。AIモデルにデータを与え、予測誤差を最小化するようにパラメーター(モデルのトレーニングに使う変数)を調整し、性能を検証しながら、満足のいく結果が得られるまで改良を繰り返す。

 例えば、画像認識モデルの学習において、開発者は猫や犬のラベル付き画像を何百万枚も入力し、アルゴリズムに学習させる。AIモデルは耳の形や体の輪郭、顔のパターンなどの特徴を識別し、学習を重ねるごとに精度が向上する。その結果、キツネを犬と誤認するようなミスを減らしていくことができる。

 同様に、ECサイトのレコメンデーションシステムを構築する場合、開発者はクリックや購入履歴、評価といったユーザーの行動履歴を入力する。AIモデルはユーザーの嗜好の類似性を学習し、実際の運用環境で、より精度の高い提案を実施できるようになる。

 一方で推論は、学習フェーズで獲得した知識を用いて、新しいデータに対して予測や判断をするプロセスだ。これはAIモデルが実際の運用環境で動作する段階であり、学習フェーズとは異なり、リアルタイム性が求められることが多い。

 例えば、ECサイトでユーザーが商品を閲覧すると、AIモデルはそのユーザーに最適な商品をリアルタイムで推薦する。同様に、AIチャットbotがユーザーの質問に答える際も、学習済みのデータを基に最適な応答を推論し、即座に返答する。このように、推論フェーズでは、新しい入力に基づいて即時の判断が実施される。


 中編は、学習と推論をそれぞれコストの観点から解説する。

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