「静かな退職」は“やる気がない”働き方? 反発が起こる理由とは:仕事だけ頑張っていればよい時代は終わった?【前編】
意欲が低く、必要最低限の業務だけを遂行する「静かな退職」が広がりつつある。この働き方は、業務に対して消極的な態度を取る「ディスエンゲージメント」と何が違うのか。
退職はせず、必要最小限の業務のみをこなす「静かな退職」(クワイエットクイッティング)が、従業員の共感を呼んでいる。
コンサルティング企業Gallupが2022年9月に実施した調査によると、米国の労働者の約50%はクワイエットクイッティングを実践していることが明らかになった。この結果は2022年7月、米国で働く18歳以上の労働者1万5091人に調査した結果に基づく。
クワイエットクイッティングに似た言葉として、業務に対して消極的な態度で関わる「ディスエンゲージメント」がある。この2つの言葉は同じ意味なのか、それとも別の現象なのか。この点について、専門家の中では意見が分かれている。
クワイエットクイッティング=ディスエンゲージメント?
コンサルティング企業PA Consulting Groupの人材・変革部門プリンシパルコンサルタントのキャサリン・オハロラン氏は、両者には関連性があるものの、クワイエットクイッティングが広まった理由の一つは、単に名前が付けられたことだと考えている。
「ディスエンゲージメントという単語は魅力的に聞こえない。一方でクワイエットクイッティングは、『現象』として認識された」。こうオハロラン氏は説明する。「現象にクワイエットクイッティングという固有名詞が付いたことで、ソーシャルメディアを頻繁に利用する労働者の注目を集め、より広い層に届いている」
人材評価、管理ソフトウェアベンダーTalogyで国際評価研究開発部門長を務めるアリ・シャルフルーシャン氏は、クワイエットクイッティングを「業務に対する消極的な態度と、従業員が置かれた状況を内包する言葉だ」と述べる。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を経て、従業員のワークライフバランスは見直された。テレワークへの移行が進み、世界情勢における不確実性も課題となっている。「コロナ禍を経て生まれたさまざまな要素がディスエンゲージメントを助長させた中で、多くの従業員が企業との断絶を経験した結果、クワイエットクイッティングという概念に共感している」とシャルフルーシャン氏は説明する。
給料相応の働き方に上司が反発 その理由は
ユニバーシティカレッジロンドン(University College London)経営学部准教授のアンソニー・クロッツ氏は、ディスエンゲージメントとクワイエットクイッティングは別物だと考えている。
クワイエットクイッティングが物議を醸し、企業の経営層がこの単語に反発している理由をクロッツ氏は次のように説明する。「給与額に見合った仕事だけをするという従業員の考え方に対して、企業の経営層は『キャリアを前進させる唯一の方法は給与額以上の努力をすることだ』と言い続けてきたからだ」
クロッツ氏によると、IT部門のリーダーの中には職務以上の努力をしてきた人がいる。そのため、部下にも同様の姿勢を求めることを自分の役割の一部と考えている。「今や従業員の多くは、与えられた業務だけを遂行し、それ以上の努力はしなくても満足できている」(同氏)
この考えに共感しているのは、ソーシャルメディアの主要ユーザー層である若い世代だけではないこともクロッツ氏は指摘する。
「退職者数の増加を考えると、幅広い世代の従業員においてクワイエットクイッティングが起きていると考えられる」(クロッツ氏)
さらに世界的な景気の低迷が続く中、退職に動くよりもリスクが低い選択肢としてクワイエットクイッティングを選ぶ従業員は増加する恐れがあるとクロッツ氏はみている。
人事(HR)ソフトウェアベンダーVisierが公開した調査結果によると、英国の労働者2003人のうち46%は転職を希望しているにもかかわらず、そのうち81%が現在の雇用主のもとで勤務し続けると回答した。調査は2022年9月〜10月、Visierの委託先である調査会社Censuswideが実施した。対象者は英国の従業員数250人以上の企業に勤める従業員2003人だ。
次回は、クワイエットクイッティングをチャンスとして捉えるための考えや取り組みを紹介する。
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