ラズパイだけじゃない 軽量版OS「Windows 10 IoT」が使えるデバイスは?:IoT用Windowsの基本をおさらい【前編】
MicrosoftのIoT用OS「Windows 10 IoT Core」および「Windows 10 IoT Enterprise」の特徴とハードウェア要件を解説する。IoT対応デバイスを計画する際のポイントとは。
Microsoftの「Windows 10 IoT」は、IoT(モノのインターネット)用途に向けて開発された、主に組み込み用途で使われる小型ボードコンピュータ向けのOSだ。そのエディションの一つである「Windows 10 IoT Core」と「Windows 10 IoT Enterprise」の特徴と、使用できる組み込みデバイスの要件を解説する。
ラズパイだけじゃない 「Windows 10 IoT」が使えるデバイスは?
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Windows 10 IoT CoreはクライアントOS「Windows 10」の軽量版で、通常のWindowsと同様のユーザー体験を提供しつつ、IoT向けの機能が強化されている点が特徴だ。小型でリソースの限られたデバイスに最適で、IoT環境で使用される組み込みシステムなど、単一用途の低消費電力デバイスが主な対象となる。具体的には以下のようなものだ。
- ゲートウェイ機器
- ウェアラブルデバイス
- 「Raspberry Pi」などのシングルボードコンピュータ
- デジタルサイネージ
- スマートホーム機器
- スマートビルディング
従来のデスクトップ画面は必要としないものの、インターネット接続性やセキュリティ機能、ユニバーサルWindowsプラットフォーム(UWP)アプリケーションの実行機能が求められるデバイスに適している。
一方のWindows 10 IoT Enterpriseは、Windows 10の企業向けエディション「Windows 10 Enterprise」と同等の機能を持ち、より高性能かつ専用性の高いデバイス向けに設計されている。例えば以下のようなものだ。
- ATM
- 産業用PC
- POS(販売時点情報管理)システム
- キオスク端末
- 医療機器
特にWindows 10 IoT Enterpriseのサポートチャネル「Windows 10 IoT Enterprise LTSC」(LTSC:Long-Term Servicing Channel)は、医療機器や産業用制御装置(ICS)といった、長期的な安定稼働と最小限のダウンタイムが求められるミッションクリティカルなシステムに最適だ。
軽量ながらも、企業向けを想定した以下のようなセキュリティ機能が備わっており、大規模な企業ネットワーク内でも安心して利用できるよう設計されている。
- Secure Boot
- BitLocker
- Trusted Platform Module(TPM)
ただし、これらの分類はあくまで一般的な目安に過ぎない。どちらが適しているかを判断する際には、まずは推奨される最小システム要件を確認することが重要だ。
Windows 10 IoT Coreの推奨ハードウェア要件は以下の通り。
- CPU
- Armベースの場合、「Arm Cortex-A53」 のような32bitまたは64bitのArmアーキテクチャに対応。
- x86、x64ベースの場合、Intelの「Atom」「Celeron」などの低消費電力プロセッサが想定されている。
- メモリ(RAM)
- 256MBから動作可能だが、快適なパフォーマンスを得るには512MB以上が推奨される。
- ストレージ
- 最低2GBのストレージ容量が必要。
- グラフィックス
- ディスプレイを備えるデバイスでは、「DirectX 9」以降とWDDM(Windows Display Driver Model)1.0ドライバのサポートが必要。
- ネットワーク
- 利用目的に応じて、有線(イーサネット)、無線LAN(Wi-Fi)、またはセルラー通信(携帯電話回線接続)のいずれかに対応している必要がある。
- 周辺機器
- 外部センサーやデバイスとの通信のために、GPIOピン、I2C、SPI、UARTなどのインタフェースに対応している必要がある。
Windows 10 IoT Enterpriseの推奨ハードウェア要件は以下の通り。
- CPU
- x86、x64アーキテクチャのプロセッサが必要で、Intelの「Core i3/i5/i7」「Xeon」、AMDの「Ryzen」または同等レベルが推奨される。
- メモリ(RAM)
- 32bit版では最低1GB、64bit版では最低2GBのメモリが必要。
- ストレージ
- 32bit版のインストールには最低16GB、64 bit版には最低20GBのストレージ容量が必要。
- TPM
- セキュリティ機能のため「TPM 2.0」に対応している必要がある。
- グラフィックス
- 「DirectX 9」以降と「WDDM 1.0」ドライバに対応していることが求められる。
- 高度なグラフィック処理やAI(人工知能)タスクの処理が必要な場合は、追加のGPUが求められることもある。
- ネットワーク
- 標準ではイーサネットまたはWi-Fiに対応。モバイルデバイス向けにセルラー通信もオプションとして使用可能。
- ディスプレイ
- 必須ではなく、デバイスの用途に応じて搭載の有無を選択できる。
次回は、Windows 10 IoTのユースケースを解説する。
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