ユーザーの「したい」をユーザーより先に知る? AIで変わる配車:配車アプリ開発会社がAIに注力する狙い
配車アプリケーションを開発するGrab Holdingsは人工知能(AI)の活用を本格化させている。AI活用によって、ユーザーはどのようなメリットを得られるのか。Grab HoldingsのAI戦略を説明する。
配車アプリケーション「Grab」を手掛けるGrab Holdingsは2025年5月、シンガポールに人工知能(AI)技術の開発センター「Artificial Intelligence Centre of Excellence」(AI COE)を開設すると発表した。同社はこのセンターによって何を目指しているのか。ユーザーにとってのメリットとは。
AI技術の活用でGrabはこう変わる
Grab HoldingsのAI COEは、同社のシンガポール本社内にある。そこを拠点に、AI技術のスキルを持った人材育成やAIシステムの開発、実装を進めるという。開設イベントでシンガポールのガン・キムヨン副首相兼貿易産業大臣は、「AI COEによって高付加価値の仕事が生まれることに期待を寄せている」と述べた。
AI COE開設の狙いについて同社の最高技術責任者(CTO)スーテン・トーマス・パラダテス氏は、「自社におけるAI開発に注力することで、Grabユーザーにとっての利便性や安全性を高めたい」と語る。同社が特に力を入れているのは、AI COEを使って「シーケンス予測」の機能をシステムに組み込むことだ。シーケンス予測とは、機械学習を使ったデータ分析によって将来を予測する仕組みだ。
シーケンス予測を踏まえてGrabユーザーが「次のしたいこと」を正確に把握し、ユーザー体験の向上につなげたいと同氏は説明する。「ユーザー一人一人にパーソナライズされたレコメンデーションの提供を目指している」(パラダテス氏)
Grab Holdingsは外部パートナーとの連携も強化する方針だ。その一環として進めているのが、AIベンダーOpenAIのAIモデルを利用した音声アシスタント機能の開発だ。これによって視覚障がい者は音声コマンドで配車を予約できるようになる。音声アシスタントがシンガポールのアクセントや建物名を正確に認識できるように、同社はSingapore Association of the Visually Handicapped(シンガポール視覚障がい者協会)に協力を仰ぎ、約8万件の音声サンプルを収集したという。
同社が考える、AI COEのもう一つの重点領域は、開発者の生産性向上だ。アプリケーションのセキュリティ実装をAI技術によって自動化し、アプリケーション開発時間を短縮するのが狙いだ。パラダテス氏によると、将来、マーケティングやサービスの価格設定にもAI技術による自動化を取り入れる予定だ。
AI COEの取り組みとしては他にも、道路に落ちた障害物の検出や、リアルタイムの洪水監視といった機能を開発する予定だ。Grab HoldingsはAI COEでさまざまなイノベーションを創出し、世界各国に輸出したいと述べる。
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