活性化する、AI用データセンターの誘致合戦 サウジアラビアの大胆な戦略とは:NVIDIAも動いた
人工知能(AI)技術の普及を背景に、世界各国でAI技術用データセンターを誘致する競争が激しくなっている。サウジアラビアも例外ではない。同国の「大胆な戦略」とは何か。
サウジアラビア政府は、自国を世界有数のデータハブへと成長させることを目指している。そのために外国のIT企業を誘致し、人工知能(AI)技術を処理するためのデータセンター建設を支援する。自国外でデータセンターを作る際に懸念となるのは、地元政府の介入リスクも含む、データ安全性の確保だ。サウジアラビア政府はその心配をどのように払拭(ふっしょく)しようとしているのか。
サウジアラビアが進めている政策はこれだ
AI技術の利用が急速に広がる中、AI技術で扱うデータをどこに保管し、どう安全性を確保するかが課題になっている。サウジアラビア政府は同国にデータセンターを開設する外国企業に対し、データの安全性を保証する計画を打ち出している。データセンターを大使館と同じような扱いにすることで、その企業の本国の法律が適用されるようにする法案を出した。法案は、サウジアラビア政府がデータセンター運営に介入することを禁じているという。
英Computer Weeklyの分析によれば、欧州、中東、アフリカ(EMEA)におけるデータ市場の中で、サウジアラビアの首都リヤドはギリシャの首都アテネに次いで、運営中や計画中のデータセンターが少ない。リヤドにあるデータセンターのコンピューティング能力はEMEAの首位であるロンドンの約5%にとどまる。サウジアラビア政府は大胆なデータセンター誘致計画で巻き返しを図る形だ。
一方で米国政府は同国企業のAIチップの輸出に関する規制を撤廃している。そうした中、GPU(グラフィックス処理装置)などの半導体製品を手掛けるNVIDIAは2025年5月、サウジアラビアのAIベンダーAl-Mustaqbal Lil-Thaka Al-Istinai(HUMAINの名称で事業展開)との提携を発表した。HUMAINはNVIDIAのGPUを採用し、大規模なAI処理用データセンターを建設する方針だ。
不動産コンサルティング企業Knight Frankの不動産取引担当者、ステファン・ビアード氏はサウジアラビア政府のデータセンター戦略を受け、「まだ未成熟な市場だが、機会は大きい」とみる。同氏によると、サウジアラビアは10年以内に世界有数のデータセンター建設地になる可能性がある。サウジアラビアは電力費用が比較的安いことや、労働人口が急速に伸びていることが追い風になっているとビアード氏は説明する。
サウジアラビア隣国のバーレーンは2018年に外国企業に対し、データの独立性を保証する仕組みを導入した。アラブ首長国連邦(UAE)はフランスやイタリアとデータ保護の協定を結んでいる。今回、サウジアラビアもデータセンター誘致計画を打ち出したことで、中東におけるデータセンター建設の競争が激化しそうだ。
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