手入力はもう終わり 書類処理を自動化する「IDP」ツール導入の手引:IDPとは何か【後編】
手作業の請求書処理をやめたい――。そのような声が上がる職場にお薦めなのがインテリジェントドキュメント処理(IDP)ツールだ。導入における課題や主要なIDPツールを紹介する。
「インテリジェントドキュメント処理」(IDP:Intelligent Document Processing)は、書類の分類や情報の抽出を、自動で実施する技術だ。自組織にIDPツールを導入する場合、どのような点を考慮すればいいのか。選ぶ際のポイントとともに紹介する。
IDPツール導入時に考慮すべき点とは
併せて読みたいお薦め記事
連載:IDPとは何か
データクオリティーを保つベストプラクティス
考慮点1.データの品質
画像の品質がそもそも低かったり、ぼやけていたり色あせていたりする場合、紙文書を検索可能なデジタル形式に変換する「光学文字認識」(OCR)、「自然言語処理」(NLP)によるデータ抽出の精度が低くなる可能性がある。
考慮点2.既存システムとの連携可能性
一般的なIDPツールはさまざまな業務システムと連携できるが、一部のレガシーシステムとは連携できない場合がある。
考慮点3.セキュリティ
一部の組織は、患者記録のような機密データを取り扱う場合がある。この場合、扱うツールが米国の「医療保険の携行性と説明責任に関する法律」(HIPAA)やEU(欧州連合)の「一般データ保護規則」(GDPR)などの法規制に準拠している必要がある。
考慮点4.ベンダーのサポート体制の有無
IDPツールを導入するには、適切な人員の配置や技術的な知識が求められる。導入後の運用に向けた体制の整備も重要な課題だ。
IDPツールを選ぶポイントは
自組織に適したIDPツールを選定する際に、注意すべきポイントは以下の通りだ。
選定ポイント1.処理できるデータ構造の種類
構造化データ、半構造化データ、非構造化データを処理できるかどうかを確認する。非構造化データは、請求書、契約書、スキャンしたドキュメント、フォーム、メールなどを指す。
選定ポイント2.処理精度
さまざまな種類のドキュメントに対して、OCRやNLPが十分な精度を発揮できるかどうかを確認する。
選定ポイント3.セキュリティとコンプライアンス
IDPツールが業界標準のセキュリティおよびコンプライアンス基準に準拠しているかどうかを確認する。
選定ポイント4.システムとの連携可能性
IDPツールが既存のシステムと適切に統合できるかどうかを確認する。
拡張性
事業の成長やデータ量の増加に応じて拡張可能なツールかどうかを確認する。
主なIDPツール
調査会社Gartnerが運営する口コミサイト「Gartner Peer Insights」は、主要なIDPソフトウェアとして以下を紹介している。
- Adobeの「Adobe Acrobat AI Assistant」
- Appianの「Appian Intelligent Document Processing」
- Amazon Web Services(AWS)の「Amazon Comprehend」
- Googleの「Document AI」
- Hyland Softwareの「Intelligent Document Processing Software」
- Microsoftの「Azure AI Document Intelligence」
- Open Textの「OpenText Capture」
- Rossumの「RossumAurora」
- ServiceNowの「Automation Engine」
- UiPathの「Business Automation Platform」
自動ドキュメント処理との違いは?
「自動ドキュメント処理」(Automated Document Processing、以下ADP)は、定義されたルールや構造化されたフォーマットに従い、文書からデータを自動的に抽出する技術だ。
IDPは、OCRに加えて、人工知能(AI)技術やNLPといった技術を活用する。この特徴によって、さまざまな形式のドキュメントを扱うことができ、システムを大きく変更せずに使い続けられるようにする。
ADPは、標準化されたフォーマットのドキュメントを繰り返し処理する作業に適している。IDPは、より複雑なワークフローや多様な形式のドキュメント処理に適している。
TechTarget.AIとは
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。