AIは「大きいほど賢い」わけじゃない? LLMとの比較から見る「SLM」の実用性:SLMの基礎をおさらい【前編】
AI導入では、AIモデルの“大きさ”だけが重要な要素ではない。大規模言語モデル(LLM)と小規模言語モデル(SLM)の比較を通して、現場で生きるSLMの強みを解説する。
AI(人工知能)活用において、「AIモデルは規模が大きければいい」とは限らない。企業にとって重要なのは、用途に応じて最適なAIモデルを選ぶことだ。昨今は、特定用途に特化した小規模言語モデル(SLM)も存在感を高めつつある。本稿は、LLMとの比較を通してSLMのメリットを解説する。
AIは「大きければ正解」ではない? LLMとの比較から見る「SLM」の実用性
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LLMはその名が示す通り、膨大なデータを学習しており、高度なパターン認識や分析が可能だ。一方、SLMはより小規模なデータの集合体で、特定の領域や目的に特化するケースが多い。そのため、対象分野でより的確かつ迅速な応答が期待できる。
LLMの持つ知識は広範囲に及び、特定の用途に縛られない汎用(はんよう)性がある。裏を返せば、「文脈に即した理解」がやや曖昧になることもある。SLMは、特定の領域に特化されていることで、分野における複雑な文脈もより正確に解釈できるとされている。
こうした文脈適応性に加えて、SLMは軽量であり、必要なコンピューティングリソースは少なく済み、処理の遅延が少ないことから、リアルタイム処理が求められる場面での活用に適している。
代表的なSLMとしては以下のようなモデルが挙げられる。
- GoogleのLLM「BERT」の軽量版「DistilBERT」
- Googleの「Gemma」
- AIベンダーMistral AIの「Mistral 7B」
- Microsoftの「Phi-3 Mini」
- Meta Platformsのオープンソースモデル「Llama 3」
SLMはその名の通り小型であるため、エンドユーザーの手元にあるローカル端末など処理能力が限られたデバイスに組み込みやすいという利点もある。例えば、以下のような分野では、軽量かつ省リソースであるSLMの特性が大きな強みとなり、今後の活用範囲も広がっていくとみられている。
- IoT(モノのインターネット)
- エッジコンピューティング
- モバイル端末での利用
SLMはどれくらい小さいのか?
これまで「小規模」と言及してきたSLMだが、サイズの定義にはかなり幅がある。数百万個のパラメーター(AIモデルの振る舞いを決定する変数)しか持たない小さなモデルも含まれれば、数十億、場合によっては数兆個のパラメーターを持つモデルがSLMに分類されることもある。 小規模といっても、そのサイズには幅があり、用途に応じて「どの程度の大きさが最適か」は、現在も活発に議論されているテーマだ。
次回は、SLMの仕組みを解説する。
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