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「AI PC時代」と「Windows 10終了」が迫る今、PC調達の常識が変わるAI PCへの移行と新たな調達モデル【後編】

「Windows 10」のサポート終了と「AI PC」の利用拡大が同時に訪れる中で、企業が迫られているのが古くなったデバイスの適切な取り扱いと、新たな調達方法の導入だ。具体的に検討すべきポイントとは。

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 AI(人工知能)技術向けの専用ハードウェアを搭載する「AI PC」という新たな潮流が押し寄せ、同時にMicrosoftのクライアントOS「Windows 10」のサポート終了が迫る中、企業のPC運用はかつてない転換点に差し掛かっている。セキュリティや持続可能性(サステナビリティー)、コスト面での制約などが複雑に絡み合う中、企業に問われているのは“IT資産をどう扱うか”ではなく、“ITの在り方そのもの”だ。

PCの循環型モデルと新たな調達戦略

 OSのアップグレードを実行する際、古くなったハードウェアをどう取り扱うかはいつでも避けては通れない重要な問題だ。調査会社Canalysは、Windows 10の公式サポートが終了する2025年10月までの約2年間で、「Windows 11」との互換性などの問題から全PCの約5台に1台が使われなくなり、電子廃棄物になると予測する。これは約2億4000万台のPCに相当するという。

 廃棄されるデバイスは、環境破壊の要因となるだけでなく、適切に処分しなければ企業にとって重大なセキュリティリスクにもなり得る。再利用やリサイクルを可能にするには、保管されているデータを完全かつ安全に消去することが不可欠だ。

 ハードウェアを安全かつ責任ある方法で廃棄するには、「IT資産の適正処分」(ITAD:IT Asset Disposition)を担う信頼できるプロバイダーを選ぶ必要がある。とはいえ、AI PCへのアップグレードに伴って廃棄されるデバイスには、依然として利用価値が残っていることがある。一方で、サポートが終了するWindows 10搭載のPCは、市場価値が低くなると考えられる。そのため持続可能性(サステナビリティー)を重視するITADプロバイダーであっても、Windows 10搭載PCについては、リファービッシュ(再生品として再整備すること)に時間をかけるよりも、リサイクルに回す方が合理的と判断することがある。

 ただしこの問題は複雑だ。MicrosoftはWindows 10に対するセキュリティアップグレードを、2028年まで有償で提供する予定だと発表している。これは「拡張セキュリティ更新プログラム」(ESU:Extended Security Updates)」と呼ばれるもので、同社がサポート終了後もセキュリティパッチを一定期間提供する制度だ。このESUを活用すれば、Windows 10搭載PCの使用期間を延ばすことが可能になり、それに伴って再利用や中古市場での価値が再評価される可能性もある。

 だがCanalysが指摘するように、有償のセキュリティアップグレードにかかるコストは、多くのユーザーにとって簡単に負担できるものではない。その結果、ITADプロバイダーにとっても、リファービッシュではなく、よりコスト効率の良いリサイクルの方を選択する理由になり得る。

 将来を見据えると、まだ使用可能だがサポート期限が切れたデバイスに対する一つの解決策が考えられる。ソフトウェアプロバイダーが学校や予算の限られた組織に対して、セキュリティパッチを無償で長期間提供するという取り組みだ。これにより、効率や安全性を損なうことなく、リファービッシュされたデバイスを活用できるようになる。

 他には、デバイスのリファービッシュと再販を手掛ける企業と、デバイスメーカーが直接連携し、再利用が難しいデバイスから可能な限り部品を回収するという方法も考えられる。これにより、部品の再利用率を高め、廃棄物の削減や資源の有効活用につなげることができる。

 だが残念ながらこうした取り組みには、技術面や運用面、実用面での限界がある。そのため延命や再利用がより適切な解決策であったとしても、急増する電子廃棄物に対応しつつ、廃棄するハードウェアのデータセキュリティを確保するには、依然として責任あるリサイクルの実施が欠かせない。

変化をチャンスに変えるサブスクリプション型

 「AI PCの導入」と「Windows 10搭載PCの廃棄」という2つのトレンドが原因で、多くの企業が運用効率、持続可能性、そして財務的な制約とのバランスをどう取るかという課題に直面している。重要なのは、OSをアップグレードしたりデバイスを購入したりする際は、先を見越して計画を立て、適切な管理方法を早期に取り入れる必要があることだ。そうした展望の中では、循環型の管理モデルを採用することが一つの選択肢になる。それは財務的に無理のないアップグレードの実現や、使用済みデバイスの責任ある廃棄に役立つ。

 具体的にはどのような方法があるのか。一例として、ハードウェアを自社で所有せず、サブスクリプション型契約でデバイスを利用する方式がある。このモデルでは、あらかじめアップグレードのサイクルを予測できるため、計画的な更新が可能になる。そうした契約には多くの場合、IT資産の利用状況を追跡・監視するIT資産管理ツールや、契約終了後に使用済みデバイスを安全にリファービッシュするサービスが含まれている。

 このような調達モデルを採用すれば、買い切り型とは異なり、初期費用をかけずにビジネスニーズに応じた機能を利用できる。購買計画を拡大または変更する際にも、柔軟に対応できるのも利点だ。

 循環型の管理モデルを採用することで、最新のテクノロジーを活用して競争力を維持しつつ、古いデバイスは責任を持って廃棄できる。その結果、現在そして将来にわたって、業務効率と財務的な余裕を確保することが可能になる。

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