テレワーク中の“まさか”に備えるBCP ツール導入だけで安心できない理由は?:テレワークにおけるBCP【前編】
従業員のオフィス勤務を前提にした事業継続計画(BCP)は、テレワーク実施中だとうまく機能しない場合がある。技術を導入するだけでは、有事の際に事業の中断を防ぐことは困難だ。見落とされがちな課題とは何か。
事業継続とは、自然災害、停電、サイバー攻撃、ネットワーク障害といった事業を中断させる出来事が発生した際に、事業への影響を最小限に抑え、重要な業務を継続させるための取り組みだ。企業は通常、オフィスビルやデータセンターに対してはこうした事態への対策を講じているが、支社や従業員の自宅といった場所では、事業継続体制が不十分な場合がある。テレワーカー向けの事業継続計画(BCP)を持つべき理由と、そのために企業が解決すべき課題を解説する。
テレワーク実施企業のBCPで重要な“もう一つの課題”
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テレワーク時に役立つ事業継続支援
現代の企業は、不測の事態に備えるためのBCPを、テレワークなどの多様な働き方でも適用できるようアップデートしなければならない。その前提として、テレワークを支える技術と人材管理の両領域を整備する必要がある。
VPN(仮想プライベートネットワーク)をはじめ、社内システムへのリモートアクセスを可能にする技術は、今や大半の企業にとって導入のハードルが低くなっている。そうした流れから、BCPで考慮すべき課題の中心は、技術的な面から、「人」をどうマネジメントするかという点に移りつつある。
もちろん、テレワークを導入していない企業でも、自社の需要に合わせて従業員のスキルを育てるといった日常的な人材管理は重要だ。だが事業継続と災害復旧(DR)では、そうした日常的な課題とは別に、有事の際にいかにして事業を復旧させ、平常時の状態に戻すかという、より重大な課題が浮上する。この計画には、オフィスワーカーとテレワーカーの両方を考慮に入れなければならない。
幸い、現代のデータセンターのほとんどは自動で、あるいは遠隔操作で管理、運用できるように設計されている。クラウドベンダーやマネージドサービスプロバイダー(MSP)は、業務アプリケーションやデータバックアップサービスといった、マネージド型のITサービスを提供している。MSPがシステムを保守し、ネットワーク接続が確保されている限り、サービスは稼働し続けるため、マネージド型サービスはシステム停止の可能性を低減させるのに役立つ。
企業は事業中断時に、何を優先して復旧させるかを決定する必要がある。論理的には、最も多くの従業員が働き、基幹システムが稼働する拠点を優先すべきだ。テレワーカーを抱える企業の場合、テレワーカー固有のニーズをどの程度優先するのかを判断しなければならない。
リモートでホストされているアプリケーションを利用している企業の場合、ベンダーがサービスを継続し、ネットワークが通じている限り、オフィスワーカーかテレワーカーかにかかわらず、従業員は業務システムを使い続けることが可能だ。真の課題は、自社でシステムやデータベースを運用している企業が、それらの資産をいかに遠隔で管理するかという点にある。
リモートでの事業継続管理
技術的な課題とは別に、テレワーカーを管理するための施策も必要になる。定期的な個人面談やチームでの電話会議やWeb会議を設定し、従業員の業務状況を評価したり、コミュニケーションを活発に保ったりするのも効果的な管理手法だ。
オフィスにいるチームやプロジェクトマネジャーは、プロジェクト管理のために会議システムやコミュニケーションツール、タスク管理ツールなどを利用できるようにしておかなければならない。こうした活動やツールは、大規模な災害が発生した後でもテレワーカー同士の連携を保ち、業務を継続できるようにするために重要だ。
業務システムの中は、管理用のダッシュボードを提供しているものがある。管理職はこれらのダッシュボードを通じて、自身の担当業務や部下の状況をリアルタイムで把握できる。人事や総務などの管理部門は、企業運営に必要な社内の各種活動が実施できるように、ダッシュボードや業績関連データを参照できる状態にしておかなければならない。
以前は誰かのデスクに行けばすぐにできたような簡単な相談や打ち合わせも、テレワークを実施する企業であれば、Web会議を設定する必要がある場合がほとんどだ。そうした会議の日程調整を支援するには、従業員全員がお互いのスケジュールを確認できる状態が不可欠だ。ビデオ通話は、従業員同士、部下と上司、プロジェクトチームといった人間関係を強める効果も期待できる。
テレワークにおける、こうした事業継続手法の目的は、事業を中断させる出来事が発生する前の業務の進め方やコミュニケーションを、可能な限り平常時に近い形で再現することにある。そのためには、業務をプロセスレベルで理解することが重要だ。これには事前に実施した事業影響度分析(BIA)のデータが役立つ。BIAは、主要な業務プロセスを特定し、その管理に必要な従業員、技術、社内外の部門や外部サービスを洗い出すための分析だ。
本社や支社が利用できなくなった場合、テレワークは重要な事業継続戦略になる。だがテレワーカーをどのような新しい就業体制の下で、どこに配置するかは慎重に検討しなければならない。全員を1つの代替拠点に集めるべきか、それとも複数の場所に分散させるべきか。事業中断後、どれだけ迅速に移行できるか。いつ元のオフィスに戻れそうか。全く新しい働き方が必要になるのか。これらの点を考慮する必要がある。
次回は、テレワーカーを対象としたBCP策定時の考慮点を紹介する。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。