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VMware“ライセンス変更”で揺らぐ「サポートは何のためにあるのか」IT運用に与える影響は

VMwareのライセンス変更は、企業のIT運用に大きな影響を与えている。サポート経路の不透明化と強制的な価格改定により、顧客は“安定性”を求めてBroadcom以外の選択肢に目を向け始めた。

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VMware | サーバ仮想化


 VMwareのライセンス変更を巡る問題において、法的な面、そして運用面での新たな展開が見られた。その出来事は、顧客とパートナー企業の双方にとって不確実性が高まっていることを示している。これはライセンス条件の変更から信頼性の低下、責任回避、そして予測可能性の破綻へとつながる話だ。

 重要な展開の一つは、Broadcomの発表からではなく、ハーグの法廷からもたらされた。注目を集めたBroadcomとオランダ政府機関Rijkswaterstaat(RWS)間の紛争の後、判事は同機関がそのプラットフォームから移行する間、VMwareはサポートを継続して提供しなければならないとした。この裁定は、サポートが最大2年間、合理的なコストで提供されなければならないことを明確にした。

VMwareサポートの行方

 サブスクリプションへの急激な転換に関するBroadcomの主張と、従来のライセンスモデルでの延長要求の拒否は、擁護できないと見なされた。裁判所の見解では、同じソフトウェアを使い続けるためだけに85%の価格上昇を強制することは、合理的な前進の道ではなかった。

 これは、VMwareのライセンス変更を巡る問題に関して、法的介入があったまれなケースだ。ただし、ほとんどの企業は、同じように裁判所の判断に頼ることはできない。根本的な問題はなくなっていない。永続ライセンス保有者がBroadcomのサポートを維持するための明確または一貫した道筋が存在しない。以前はVMwareに直接つながっていたサポート経路が、ますます流通パートナー企業を経由するようになっている。

 サポートモデルの再編を受けて、顧客は今や仲介者に依存することになり、応答時間が長くなり、保証が少なくなることに気付くかもしれない。これはパートナー企業にとっても悪いニュースだ。パートナー企業は今や、常に十分なリソースやインセンティブを持っているわけではないのに、サポートのコストと複雑さを自らが吸収しなければならない可能性がある。

 問題を別の角度から見ると、力のバランスがBroadcom有利に移行し、顧客がコントロールを放棄しなければならなくなる。顧客がいつ移行するかを選択することはできない。サブスクリプションをオプトアウト(拒否)することはできない。

 VMwareからの急な移行や高額なサブスクリプション契約を避けたい企業にとって、まだ利用可能な道筋がある。しかしそれらの道筋は狭まっている。その決定は技術についてではなく、リスクに関するものとなっている。

 サードパーティーによるサポートモデルは、しばしば「応急処置」と見なされる。移行計画や将来設計を進めるまでの“時間稼ぎ”として活用されることが多いからだ。しかしこうしたサポートモデルは、単なる応急処置以上の存在になった。企業が自らのITインフラや運用を「コントロールし直す」ための手段となったのだ。

 本来、ITにおける「サポート」とは、単にトラブルを解決するためのものではない。サポートは運用の信頼性を下支えする存在であり、計画や投資、長期的な戦略の土台にもなる。こうした長期戦略が欠けてしまうと、たとえ最も堅牢(けんろう)に設計されたシステムであっても、いずれ脆弱な部分が露呈してしまう。

 サブスクリプションへの強制移行や価格改定、サポート体制の変更を受け、多くの企業がBroadcomに対してその安定性を見いだせずにいる。IT運用において重要なのは“安定性”であるにもかかわらずだ。その安定性は今や、Broadcom以外の選択肢にこそ存在している。

 顧客をサブスクリプションに駆り立てるアジェンダもなく、ライセンスの罠もなく、隠された強制実行条項もなく、サードパーティソフトウェアプロバイダーはVMwareの顧客に明確性を提供する。何がサポートされているかが分かる。そして最も重要なことに、更新サイクルの途中でルールが変更されることがないことが分かる。重要なインフラを管理しているとき、そのような安定性の値段を決めることはできない。

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