Intelはどうなる? 人員削減、新工場撤回はむしろ“迷走”だった?:復活を左右する光明と苦難
業績不振による新工場建設計画の頓挫、人員削減と、半導体大手Intelの苦境が続いている。“新世代半導体製造プロセス”という光明はあるが、今後同社の事業は何を目指すのか。
2025年8月7日(現地時間、以下同じ)、米国大統領ドナルド・トランプ氏は、2025年3月にIntelのCEOに就任したリプブー・タン氏の辞任を要求した。これは共和党のトム・コットン上院議員がIntelの取締役会独立議長のフランク・イヤリー氏に送った書簡に端を発する。
トランプ氏はタン氏について、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「Truth Social」に、「直ちに辞任しなければならない。他の解決策はない」と投稿したが、8月11日にタン氏と面会。Intelによると、両氏は技術および製造業における米国のリーダーシップ強化のために、率直かつ建設的に議論した。8月22日には一転し、米国政府が89億ドル(約1兆3000億円)を出資し、Intelの株式約10%を取得すると明らかにした。人員削減などの計画も明らかになっており、同社の今後についてはさまざまな見方がある。
“再建”を目指すIntelの光明と苦難
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「Intel入ってない」時代
2024年2月、当時のIntelのCEO、パット・ゲルシンガー氏は同社のイベントにおいて、Microsoftなどの顧客企業向けに半導体の受託製造を提供するファウンドリー事業のロードマップを発表。1.8ナノプロセス「Intel 18A」で半導体チップを生産する計画を明かした。
共に壇上に上がったMicrosoftのCEO、サティア・ナデラ氏は、「組織や業界全体の生産性を根本的に変革するプラットフォームのシフトを目の当たりにしている」と語った。その上で、そのビジョンの達成には最先端の高性能かつ高品質な半導体を供給する必要があるとし、「Intelのファウンドリー事業と協力できることを非常に嬉しく思う」と続けた。
しかし、2025年第2四半期(2025年4〜6月期)の決算説明会で、タン氏はドイツとポーランドで計画していた新工場を白紙撤回し、オハイオ州で進める工場の建設も「ペースを落とす」と表明した。「顧客企業から購入の確約があった場合にのみ生産能力を増強し、具体的な生産目標を設定した上で設備投資を行う。そうでなければ投資はしない」。そう方針転換した。
同年7月24日付けの社員向けメッセージでは、全世界で従業員を約15%削減すると伝えた。ファウンドリー事業については、「今後、最先端の1.4ナノプロセス『Intel 14A』への投資は、顧客企業の購入確約に基づいて実施する。全ての投資には経済的な合理性が必要だ。顧客企業が必要とする時に必要な分だけ作る」といった趣旨のメッセージが書かれていた。
再生の鍵は
これに対し、Intelの元CEOであるクレイグ・バレット氏は、「顧客企業の確約がないなら新技術に投資しない」というタン氏の発言に疑問を投げ掛ける。バレット氏は、NVIDIA、Apple、Googleなど、Intelの主要な顧客企業に対し、ファウンドリー世界最大手のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)以外の半導体の供給源を確保することの重要性を訴える。同氏は、Intelの顧客企業8社が、それぞれ50億ドルを投資すればIntelにも再生のチャンスがあるとした。
Intel 14Aが顧客企業の関心を集めている可能性はある。中国の証券会社GF Securitiesの香港法人でアナリストを務めるジェフ・プウ氏は、「複数の顧客企業がIntel 14Aに関心を示しているとの情報がある。NVIDIAのゲーム用GPU(グラフィックス処理装置)のローエンド版と、Appleのチップ『M』シリーズが、今後Intel 14Aを採用すると予想している」と語る。
Intelのロードマップによると、Intel 14Aは2026年上半期に利用可能になる見込みで、業界のレポートは、2027年にIntel 14Aで製造された半導体チップのリスク生産(検証用の少量生産)が開始されると予測している。
翻訳・編集協力:雨輝ITラボ(リーフレイン)
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